10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/08/02(土) 17:59:39.17 ID:vOYu1CYh0
 シザーハンズじゃないですかー 
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:04:26.53 ID:SluoaBc3o
 秘密基地を見つけてからしばらく経ったある日。 
 彼が代わり映えもなくベンチの上で本を読んでいると、 
 急に誰かの足音が近付いてきた。 
 それまでこの場所を人が通りがかることなんて一度もなかったから 
 これだけでもう彼は飛び上がらんばかりに驚いた。 
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:09:14.85 ID:SluoaBc3o
 真っ白になった視界が色を取り戻すまでに数秒の時間を要した。 
 なんとか極度の驚きと緊張から身体の主導権を取り返して、 
 顔は文庫本に向けたまま、彼は横目で隣の様子を窺った。 
  
 俺のことを知っていて近づいてきたのだろうか。 
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:14:11.79 ID:SluoaBc3o
 彼は顔を上げて、隣を見た。 
 そこに座ってたのはおそらく大学生であろう女の子で、 
 小柄な体躯と不釣り合いに大きな鞄とギターケースを肩に負い、 
 そして厳ついヘッドホンを首から下げていた。 
  
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:19:35.27 ID:SluoaBc3o
 彼はしばらく黙ったままだった。 
 これは別に彼女の話を聞こうとしていたわけではなくて、 
 単純に彼の喉から声が出てこなかっただけだ。 
 経験がある人には分かるだろうけれど、長らく何も話していないと 
 言葉を口にするのはどんどん億劫になってくる。 
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:23:19.48 ID:SluoaBc3o
 本当に全身鉄なんですね、と彼女は言った。 
 それは案の定彼の異形を面白がるようなもので、 
 彼の神経を逆なでするには十分過ぎる台詞だった。 
 彼は隣に座る女性を思い切り睨みつけて、 
 興味本位なら今すぐ失せろ、と精一杯低い声色を作って脅しにかかった。 
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:27:02.38 ID:SluoaBc3o
 「お名前教えてもらってもいいですか?」 
  
 「…………」 
  
 「じゃあ鉄さんとお呼びしますね、 
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:28:35.83 ID:SluoaBc3o
 「鉄さん、無表情ですね」 
  
 「……俺が笑うと、顔がギシギシうるさいから」 
  
 「大丈夫です。私、黒板引っ掻く音とか平気ですから」 
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:32:42.22 ID:SluoaBc3o
 「鉄さん、無表情ですね」 
  
 「……俺が笑うと、顔がギシギシうるさいから」 
  
 「大丈夫です。私、黒板引っ掻く音とか平気ですから」 
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:36:20.66 ID:SluoaBc3o
 「なにか喋ってくださいよ、会話になりません」 
  
 苦手なんだ、と彼は答えた。 
 今まで人とまともに会話してきたことなんて、数えるほどもない。 
 なんでこの子は初対面相手にこれだけ口が回るんだろう。 
20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:39:40.49 ID:SluoaBc3o
 突然、彼女の鞄からけたたましい音が鳴った。 
 何か着信があったらしい。 
 彼女は慌てて大きな鞄をごそごそ探って携帯電話を取り出し、 
 それを見て素っ頓狂な声を上げた。 
  
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