32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 19:17:23.06 ID:SluoaBc3o
「魂を持ったロボットが誕生したと仮定してさ」
「はい」
「そいつはそれでも生きてはいないんだろうか?
33:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 19:21:25.66 ID:SluoaBc3o
「鉄さんだって、いつかは死ぬんですよね?」
少し考え込んだ様子の彼に向かって、彼女はそう言った。
随分と不躾な質問だ。
「まだ死んだことが無いからわからないね」
34:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 19:26:51.60 ID:SluoaBc3o
「少なくとも鉄さんは生きてます」
「そう願うよ」
「じゃあやっぱりいつか死ぬんでしょう」
35:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 19:30:29.01 ID:SluoaBc3o
彼は次第に彼女が訪れるのを心待ちにするようになった。
その頻度はそう高くなく、せいぜい月に二、三度で、
大抵の場合、彼は少し肩を落としながらとぼとぼと家路についた。
36:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 19:33:44.60 ID:SluoaBc3o
「やっぱり磁石、くっつくんですね!」
「当たり前だろ! 取ってくれよこれ!」
「いや、くっつかない鉄もありますよ。ステンレスとか」
37:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 19:38:01.32 ID:SluoaBc3o
他にも、彼女はいろんなことをしては彼の心を揺さぶった。
例えばその冬の日はこうだった。
寒さが苦手らしく、彼女は全身をニットに包んだ服装をしていた。
38:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 19:41:08.92 ID:SluoaBc3o
「鉄さんは寒くないんですか?」
「いやあんまり」
「なんでですか、鉄なんですから身体がすぐに冷えるでしょう」
39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 19:46:53.05 ID:SluoaBc3o
「暑いとか寒いとか、お前らにとっちゃただ煩わしいだけのもんなんだろうけど
俺はそれをどれだけ願っても感じられないんだぞ。
ただ想像することしかできないんだ」
感覚が他人より少ないこと。
40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 19:50:11.37 ID:SluoaBc3o
彼女は右手袋を外して、本を支えていた彼の左手に自分の右手をそっと添えた。
「冷たっ!」と彼女は叫び声を上げた。
彼の心臓は飛び跳ねた。
叫び声ではなくて、もちろん彼女の手のせいだ。
41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 19:53:42.39 ID:SluoaBc3o
これはもう言うまでもないことだろうけれど、彼は彼女のことが結構好きだった。
でも「全身鉄でできている人はさすがにちょっと」なんて言われてしまうんじゃないかと思って、
例えばデートに誘ったりだとか、思いの丈をぶつけたりだとか、
そういった行動を起こす気にはなれなかった。
42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 19:57:07.65 ID:SluoaBc3o
結局彼は何も状況を変えようとせずに、忙しさの合間を縫って
たまにベンチに遊びに来る彼女を待っているだけだった。
十分に満足だったのだ。
彼女がわざわざ自分と話しに来てくれるという、それだけで。
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