7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/08(月) 22:42:13.76 ID:rwKse1D30
出されたお茶を勢いよく飲んで、冷ましもしなかった事を後悔しながら新聞に目を落とす。
芸能欄を見ていると、そこだけ赤マーカーで囲まれている部分がある。妻の仕業だ。
「……765プロ。三浦あずさと星井美希」
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2014/09/08(月) 22:45:41.96 ID:rwKse1D30
それから、また暫く経った頃だった。昼食を食べに出かけた定食屋のテレビに、私は思わず手にしていたご飯茶碗を取り落していた。
『知らぬが仏放っとけない♪』
『唇ポーカーフェーイス♪』
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2014/09/08(月) 22:46:37.15 ID:rwKse1D30
、なぜ私は、こんなにも動揺しているのか。なぜ、後ろめたい気持ちを抱かなければいけないのか。
そんな、複雑な気持ちを抱きながらも、あずさ……いや、765プロの活動は更に大きなものになっていく。
竜宮小町の一員として、あずさも色々なメディアへと露出が増えていた。
他のアイドルよりも歳が上だからか、雑誌の巻頭グラビアをあずさが飾る事もあって、親としては複雑な心境だった。
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/08(月) 22:48:07.32 ID:rwKse1D30
「福井?何でまたそんなところに……へぇ、合宿。大変ねぇ……」
家に帰るなり、長電話を終えたばかりといった感じの妻と目が合った。
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/08(月) 22:49:20.53 ID:rwKse1D30
「じゃあ決まりね、宿の手配とかもしておかないとね」
「おい、まだ」
「行くわよね?」
妻がこう言い出したら、私の負けだった。
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/08(月) 22:50:57.63 ID:rwKse1D30
ライブまでの日々はあっという間に過ぎて、季節は秋に移り変わる。
庭の木の葉が色付いて、少しずつ落ち始めたころに、私は765プロダクションのライブ会場に居た。
「……凄い人だな」
13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/08(月) 22:53:09.79 ID:rwKse1D30
妻が声を掛けると、その女性が驚いたように振り返る。
「あ、あら三浦さん。お久しぶりです、何だか驚かせてしまって」
「いいえそんな事は……旦那さん、アリーナに?」
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2014/09/08(月) 22:54:58.62 ID:rwKse1D30
いよいよ、アリーナの中へ入る。一瞬薄暗くなったので目がそれに慣れるまではとにかく暗いアリーナの中も、徐々に明るく見えるようになってくる。
「おお……これは」
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/08(月) 22:57:57.56 ID:rwKse1D30
どういう意味だ。
妻も最初は反対していたはずだ。其れがいつの間にかライブに行くようになり、CDも買い揃えるようになっていた。
いや、それは私も同じことだった。
新聞の芸能欄は必ずチェックするし、歌番組だって妻が録画したのを後で見ていることもある。
つまり、いつの間にかアレだけ反対していた娘のアイドル活動に対して、いつの間にか私は好意的な感情を抱いていたのではないだろうか。
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/09/08(月) 23:01:14.40 ID:rwKse1D30
一際歓声が大きくなり、妻の顔を見つめていたのをステージに戻す。
幕の向こう側には、小さな人影が並んでいる。その幕が上がり始めるのを見ながら、会場内の熱気が上がっていくのを感じた。
(娘は……アイドル、か)
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/09/08(月) 23:03:12.35 ID:l0vi/jCGO
おつ
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