過去ログ - 【艦これ】「提督、榛名は……榛名は大丈夫ですよ」
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30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/04(土) 14:24:04.02 ID:mAyfGwuPO
「お疲れさまでした、提督」

通信が終わり、椅子に深く腰掛ける俺を夕張が労う。

「俺は何もしてないさ。夕張こそ、お疲れ。もう休んでいいぞ」

実際、俺はただ指示を出しただけ。命の危険のない安全な司令室(ここ)で。

「いえ、私も皆さんの帰還を待ちます!」

なのに、どうして彼女達は、こうも俺に信頼を寄せるのか。こんなクソッタレな指揮をした俺を、どうしてーー。

「良いから休め。明日は今日以上に過酷な日となる。ここで無茶をして倒れられると困るんだ」

隣に居る彼女の頭に手を伸ばし、その髪を梳くように優しく撫でる。夕張も心地よさげに目を細め、俺の手に身を委ねた。

「……分かりました。提督も無理はなさらないでくださいね」

時間にすると、ほんの数分。夕張の頭から手を離すと、その手に名残惜しげな彼女の視線が絡みつく。だが、なんとか堪えたのだろう。席から立ち上がると、俺に一礼して司令室から出ていった。

「戦場で戦うお前達に比べたら、これくらいの無理なんて、無理のうちに入らんよ」

夕張を見送った後に呟いた、誰に聞かせるでもない独り言。それは紛れもない俺の本心であって。
出撃に行く艦隊を見送り、道中と帰還中の無事を祈り、帰投した際に出迎える事しか出来ない自身の不甲斐なさ。それに嫌気がさす。

「あーあ、この任務が終わったら、榛名に渡すつもりだったんだけどなあ、これ」

気分転換のつもりで、執務机の鍵が付いている引き出しーー別に盗られて困る物は入っていないから、鍵はかかっていないがーーを開ける。その中から取り出したのは握り拳程度の小さな黒い箱で、それを無造作に自身の上空に放り投げる。

緩やかな軌道で上がり、そして降ってくる箱を視線で追いながら、中空で受け止める。それを何度か繰り返していたが、ふと要らぬ事を考えたせいで、目測を見誤り、受け取り損ねてしまった。

「あー……。まあ、いいか……」

受け取るのに失敗した挙げ句、弾いてしまったために、箱は盛大に地面を滑る。その勢いで、箱の中から指輪が飛び出し、これまた地面を滑走する。

ーーケッコンカッコカリ。練度が極限状態の艦娘の限界を取り払い、更に練度を高める事を可能にする技術。その契りを結んだ艦娘に証として渡すのが、今地面を転がっている指輪である。

勢いよく転がった指輪だが、やがてその威勢も衰え、誰かの足にぶつかって止まった。




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