過去ログ - 【艦これ】「提督、榛名は……榛名は大丈夫ですよ」
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56:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/14(火) 16:09:35.18 ID:KgKqg9VtO
「ほら、立てるか?」

「え……?」

「ここに置いていく訳にもいかんだろ。送っていってやるよ」

そのまま立ち去るだけだろうと思っていた為に、目の前の手の意図を一瞬掴み損ねる。

「あ、いえ……ありがとうございます。でも、大丈夫です。一人で帰れますので……」

「そうか? なら、無理強いはしないでおくが……。そうだな、これくらいのお節介はさせてくれ」

遅ればせながら理解はしたが、これ以上他人に迷惑をかける訳にもいかない。
ーー何より、この優しさに甘えてしまうと、私はきっと壊れてしまう。

「えっ……!? ダメです、受け取れませ……っ!?」

それなのに、彼は無断で私の心を踏み荒らす。
身体に被せられたのは、白い軍服。こんなもの、受け取れる訳がないと、慌てて立ち上がる私だが、些か慌てすぎたか、足が縺れてバランスを崩してしまった。

「よっ、と。……なら、貸しておく。だから、ちゃんと返してくれよな」

「それは、無茶ですよ……」

そして、事もなげに彼に受け止められる。先程からみっともない所を見せてばかり。調子が狂わされる彼に、私は恨めしげな視線を向ける。

「そうでもないさ。君の名前は?」

そんな私の胸中を知ってか知らずか。笑みを浮かべて問いかける。

「……漣。綾波型九番艦の駆逐艦、漣です」

そう言えば、自己紹介はまだだったか。……つまり、素性すら知らない私に、この人は親身になってくれていたと。
考えてはいけない事なのに、考えてしまう。この人が、私の提督なら良かったのにーー

「そうか。なら、漣。気をつけて帰れよ」

そう言って踵を返した彼をただ見送る。結局、軍服を突き返す事は出来ず、私の身体を覆うそれは、私を暖かく包み込んでいた。

「……帰ろう」

小さく呟いて、私は前を向いて歩き出す。

ーー数日後、とある鎮守府への異動命令が私に下された。


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