過去ログ - 劇場版アイマスで水瀬家に宿泊した志保のお話 抄
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14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/10/12(日) 11:57:01.16 ID:NHNSY0P+o

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「私よ。水と氷と……布巾を二、三枚持ってきてもらえる? そ、志保の部屋にね」

 薄暗い室内の隅の方から声が聞こえて、ゆっくりと目が開いた。
 見覚えのないインテリアと肌触りの良すぎる寝具に違和感を覚えて、ようやくここが自室でないことに気がついた。

 伊織さんに私がため込んでいた汚いものを吐き出し続けるのに疲れて、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。

「起こしちゃった?」

 書き物机の上の電話に受話器を置いた伊織さんが私の隣に腰掛けた。額に手を当てて頭を撫でてくれるのがとても心地よい。
 先輩が隣にいるのだから身体を起こしていなければ失礼にあたるはずなのに、その心地よさに心が甘えてしまって、手のひらに頬ずりをしてしまう。

「ずいぶん、楽になったように思います……」

 涙で濡らしたバスローブの乾き具合を見るに、一時間も寝ていないはずだ。日付はおそらく変わったあとだろう。
 昨日も遅くまでダンスレッスンをしていた。それにたっぷりと涙を流した。
 短い睡眠では体力の回復が追いついていないはずなのに、昨日までの鉛のような身体の重さはなく、全身をマッサージしてもらったあとのような穏やかな疲労感に包まれている。

「伊織ちゃんの献身なサポートには満足してもらえたかしら?」

 飼い猫のノドをくすぐるように、先輩の指が私の輪郭を撫でる。それで目を細めても、今は涙はこぼれなかった。

 いくばくかの睡眠を取ってそれなりに気力は回復した。体力はきちんと休めば元に戻るだろう。それでも何かが物足りない。

「足りない……です……」

 つい一刻前まで必死にふりほどこうとしていた先輩を、自らぎゅっと抱きしめてしまう。

「……まるで、昔の私よね」

 腰に抱きついて、伊織さんのお腹に顔をうずめるようにしていた私が聞き取れない程度の声量で一言つぶやかれた。

「え?」

「なんでもない。……足りないのはグチを漏らすことかしら? それとも、キスの続き?」

 意地悪っぽく指摘されると頬に血がのぼってしまう。体力が尽きる直前まで、呪詛にも似た言葉を声に変えられなくなるたびに口づけで愛情を注いでもらい、膿を絞り出していたのだ。

「…………キスを、ください」

 ひとしきり汚い感情を吐き出しきった私の心は愛情に飢えている。だからこそ先輩を抱き寄せたのだし、たっぷり甘えたかった。

 最初にそうしたように、まぶたを閉じると伊織さんが私を仰向けに転がした。吐息が頬を撫でたあと、しっとりとした感触が唇に触れ―――



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