21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/27(木) 23:55:41.59 ID:McEK2sxMo
朝食を省略しシャワーだけ浴びて昨日の夢と汗を洗い流して、僕は早々に家を出た。
妹の部屋を覗くと妹はぐっすりと寝入っているようだった。ただし、昨夜僕がかけた毛
布ははだけていて、ベッドの上の妹は一糸まとわぬ全裸のままだった。僕は妹から目を逸
らした。
緊張したまま駅前の高架下に着くと、所在なげに立ちすくんでいるナオの小柄な姿が目
に入った。このまま黙って通り過ぎたいと思うほど、僕の胸は激しく動悸がし、胃は痛ん
だ。でもここでへたれるわけにはいかない。僕は渋沢の言葉を思い浮かべた。そうだ、既
にメールで僕は告白されているのだから、万に一つだってナオに断られることはないのだ。
「あ」
ナオが僕に気がついて顔を赤くして頭を下げた。
「おはようナオちゃん」
「おはようございます。ナオトさん」
彼女は恥かしそうに微笑んだ。でも体の前で震えている手が彼女の余裕を裏切っていた。
こんなに美少女のナオちゃんだって告白の返事を聞くときは緊張するんだ。何だか僕は
新しい発見をしたよう気分になり、少し気が楽になった。同時に僕は妹との酷い夜のこと
を忘れていくのを感じた。
「遅くなってごめんね」
「いえ・・・・・・あたしが早く来すぎただけですから」
しばらく僕たちの間に沈黙があった。でも今日だけはその沈黙を破るのは僕でなければ
いけない。
「メール見たよ。僕もナオちゃんのこと好きだよ。よかったら付き合ってもらえますか」
僕の前に立っている華奢な少女の目に少しだけ涙が浮かんだようだった。僕は言うこと
を言ってじっと彼女の返事を待った。
「・・・・・・はい。嬉しいです」
ナオは僕に抱きついてきたりしなかったけど、潤んだ目で僕を見つめてそっと自分の白
く華奢な手を伸ばして僕の手を握ってくれた。
それから僕とナオは並んで駅の方に向かって歩き出した。歩き出してからもナオは僕の
手を離そうとしなかった。
妹が昨日酔ってたせいで僕は辛い思いをしたのだけれど、結果的に考えるとそのおかげ
で大切な告白の時間を妹に邪魔されずに済んだのだ。あの酔い具合ではあいつは僕の後を
つけて僕の邪魔することなんかできないだろう。そう思いついたからか、無事にナオと付
き合えたせいか、僕は急にさっきまでのストレスから解放されて身も心も軽くなっていっ
た。
こんな綺麗な子と手を繋いで歩いているのだ。普段の僕なら緊張のあまり震えていたと
しても不思議はなかったけど、さっきまであり得ないほどのストレスを感じていたせいか、
今の僕の心中は不思議と穏やかだった。
「僕の降りる駅までは一緒にいられるね」
何でこんなに落ち着いて話せるのか、自分でも可笑しくなってしまうくらいだ。
「そうですね。三十分は一緒にいられますね」
ナオが微笑んだ。もうその顔には涙の跡はなかった。「ナオトさんっていつもこの時間
に登校してるんですか」
「普段はもう少し遅いんだ。この間はちょっと事情があってさ」
「そうですか。じゃあ明日からは」
彼女はそこで照れたように言葉を切った。考えるまでもなくこれは僕の方から言わなき
ゃいけないことだった。
「よかったら明日から一緒に通学しない? 時間はもっと遅くてもいいしナオちゃんに合
わせるけど」
彼女は再びにっこり笑った。
「今あたしもそう言おうと思ってました。でもいきなり図々しいかなって考えちゃって」
「そんなことないよ。同じこと考えていてくれて嬉しい」
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