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2014/12/20(土) 07:41:09.65 ID:DL0z8tZuo
事務所のドアを開けると、プロデューサーさんと忍ちゃんの話し声が耳へ入ってきた。
「マドギワさんには大人の事情ってのがあるからね」
「だから、言ったように……」
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2014/12/20(土) 07:41:40.48 ID:DL0z8tZuo
「やあ、佐久間さん」
「今日はよろしくお願いします……」
プロデューサーさんのデスクの上はいつもより散らかっていた。
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2014/12/20(土) 07:42:11.08 ID:DL0z8tZuo
プロデューサーさんは鞄を脇へ抱えて、私を促した。
事務所を出てから、彼がマフラーを巻いていないことに気がついた。
「マフラー、しないんですね」
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2014/12/20(土) 07:42:43.47 ID:DL0z8tZuo
再び訪れたファミレスは混んでいた。何ヶ月か前の昼時、ここへ来たときと同じように。
代わり映えしない店内の風景。変わったのは私たち二人と、エアコンの設定温度くらいだろう。
二人がけの席に案内され、プロデューサーさんはたらこスパを、私も同じくたらこスパを注文した。
しばらくすると、テーブルにたらこスパが二皿運ばれてくる。
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2014/12/20(土) 07:43:27.48 ID:DL0z8tZuo
「忘れないうちに」
「た、食べ終わってから、開けさせてください」
私が急いでフォークを手繰ると、プロデューサーさんは笑った。焦らなくても逃げないよ、と。
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2014/12/20(土) 07:44:08.40 ID:DL0z8tZuo
「は、はい……ぴったりです」
彼の両手の離れた私の左手首には、時計の赤いバンドが巻き付いていた。
左手をそっと耳元へ近づけると、心臓の鼓動のように時間の落ちる音がした。
83:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:45:09.81 ID:DL0z8tZuo
――――
春休み期間のレッスンはトレーナーさんと、私とプロデューサーさんの三人で行われた。
初めの二、三日はプロデューサーさんのことを意識して集中できずにいたけれど、
今はそれよりも、傍に居てくれることがこの上なく嬉しかった。
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2014/12/20(土) 07:45:41.11 ID:DL0z8tZuo
「佐久間さんにぴったりだと思って」
「そうですか……?」
「ぴったりですよねぇ」
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2014/12/20(土) 07:46:27.33 ID:DL0z8tZuo
レッスンが終わるとプロデューサーさんは私の家まで送ってくれる。
車内には彼の好きだという音楽がいつもかかっていた。
疲れに半分まぶたを落として、名前も知らないでいたロックミュージックに耳を澄ませた。
帰りの車内でプロデューサーさんが私に話しかけることは少なかった。
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2014/12/20(土) 07:47:49.85 ID:DL0z8tZuo
運命というものが在ったとして、よくできていると思う。
あの歌を歌うたび、一本の糸のような巡り合わせにぞっとした。
もしも、あの日の喫茶店で相席にならなかったら?
87:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:48:28.56 ID:DL0z8tZuo
――――
白く晴れた午前、私はレッスンスタジオに一人で居た。
プロデューサーさんは打ち合わせがあるからと、私に待っているように指示をした。
スタジオの床には冬の面影を残した空気が漂っている。
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