8: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/12/27(土) 17:12:29.01 ID:bTDiL5Hz0
ふと俺が入ってくるときの出来事を思い出す。これは恐らく、あのどちらかのものだろう。
中身を見れば持ち主のプロフィールもわかるだろうが、さすがにそれはプライバシーの侵害だ。自宅の電話番号くらい入ってそうなものだが、はてさて。
店員に渡すのが妥当と判断し、店内へと戻ろうとするが、ちょうど子連れがこちらに向かってくるところだった。母親らしき人物の両隣りに、男の子と女の子。通路一杯の幅を使っている。
9: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/12/27(土) 17:14:34.60 ID:bTDiL5Hz0
俺の学校の生徒が襲われたらしい。
その話を聞いたのは、朝のホームルーム、担任からだ。昨晩、塾から帰る途中のできごとだという。
名前は出さなかったが、場所がとある河川敷であること、女生徒であること、命に別条はないが鞄が持ち去られたことが伝えられた。次いで注意喚起もされた。
10: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/12/27(土) 17:15:22.32 ID:bTDiL5Hz0
「怖いな」と、特別棟四階の端、神山高校の辺境、地学準備室で俺の隣に座った里志はそう言った。
里志は口ではそう言っているものの、表情はにこやかだ。まさか自分が被害者になるわけがないというような。
それはある種一般的な反応だ。俺だってまさか矛先が自分に向くとは思っていない。
11: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/12/27(土) 17:16:37.73 ID:bTDiL5Hz0
「どうした、千反田」
俺は伊原の隣でかちゃかちゃとやっている千反田に声をかけた。
12: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/12/27(土) 17:17:38.02 ID:bTDiL5Hz0
いや……。そういえば。
俺はポケットからそれを取り出す。昨日偶然拾ったそれを。
「俺も持ってるんだ」
13: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/12/27(土) 17:18:41.62 ID:bTDiL5Hz0
「いやいや、いいんだよ。お二人とも、お幸せにね」
「だから、そんなことはなくてですね――折木さんも何か言ってくださいっ」
14: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/12/27(土) 17:19:32.52 ID:bTDiL5Hz0
「千反田さん、ケータイの登録はしたかな?」
思い出したふうに里志が言う。
携帯電話の登録? 自転車の防犯登録みたいなやつか?
15: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/12/27(土) 17:20:14.29 ID:bTDiL5Hz0
「あの、福部さん。携帯電話の登録ってなんでしょうか?」
おずおずと千反田が尋ねる。
16: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/12/27(土) 17:21:07.34 ID:bTDiL5Hz0
「最近の携帯電話ってのは多機能なんだよ、ネットにつなげたり、カメラもついてる」
「それくらいわかる。バカにするな」
17: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/12/27(土) 17:22:21.68 ID:bTDiL5Hz0
咄嗟に席を立った。最早条件反射といってもよい。
「あ、違うんです折木さん。携帯電話のことで聞きたいことがあって……」
その後の古典部の活動は、千反田に携帯電話の使い方を教える時間となった。メール、電話、カメラといった基本的な事項を教え終わったころ、完全下校のチャイムが鳴る。
79Res/66.12 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。