過去ログ - あやかしの地獄
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112: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/03/21(土) 21:44:23.60 ID:YCokVBHJ0
チイちゃん、オオ、チイちゃん。チイちゃん……。
ばけもののヨウに図体ばかりがでかい妾ナンゾと違って、小さくて可愛らしく、それでいて艷やかで、優しく、美しい……。
そんな彼女が、どうして……鍋で煮込まれ、美味そうな匂いを漂わせ、胃袋の地獄へと送られなければならないのでしょう。
彼女は妾とは違うはずです。人から恨みを買うなんて、そんな……そんな大それた事をしでかす女性では決して無いのです。
恐ろしい……どうして、彼女は殺されなければならなかったのでしょう。
以下略



113: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/03/21(土) 21:48:36.21 ID:YCokVBHJ0
……エッ。妾の語る事がドウニモ、理解出来ないト……。
ハハア、仰有る事はよくわかります。
つまりは、チイちゃんが何時殺され、煮込まれたのか……という事でしょう。
それについては語るも恐ろしい難解で複雑なミステリイが……。

以下略



114: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/03/21(土) 21:53:05.02 ID:YCokVBHJ0
彼女は男で在りながら、可愛らしい少女の格好をして、妾を騙し続けたのです。
その色香と人懐こい笑顔で、妾の心へスウウと入っていき、様々なものを奪っていったのです。
妾だけではありません。襤褸を着た男も、アヤツリ人形を手繰る爺も、痘痕の男も、みんなミインナ……。
チイちゃんに騙されていたのです。

以下略



115: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/03/21(土) 21:55:28.86 ID:YCokVBHJ0
……エッ。だとしたら、妾は一体チイちゃんに、何を奪われたのかって……。
ええっと……。オヤッ、おかしいですね……妾はツイ今サッキまでハッキリと記憶(おぼ)えていたのですが……。
アレやコレやと様々なものを、彼女に奪われたのですが……エッ何ですって。

……妾の話がトンチンカンだと言うのですか。
以下略



116: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/03/21(土) 22:01:34.29 ID:YCokVBHJ0
彼女は麗しき美少女チイちゃんでした。
彼は小悪な醜男チイちゃんでした。

この二つが受け入れられないバッカリに、妾は長い間闇の中へ吸い込まれていきましたが……。
今はスッカリとまともな頭を用意して、こうして順序立ててお話しているのです。
以下略



117: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/03/21(土) 22:04:06.99 ID:YCokVBHJ0
様々な可笑しな事が起こりました。
ダッテ、チイちゃんが人で亡くなって、痘痕がオシャベリ。
アヤツリ糸が切れたら死んだ老人に、可愛らしいチイちゃんを悪童と罵り美味そうに煮込む男……。
ドレもコレも全部が全部、この世のものとは思えません。
妾は化かされたかのようでした。……イエ、今は違います。違いますが……。
以下略



118: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/03/21(土) 22:09:49.00 ID:YCokVBHJ0
目を閉じても、あやかしは目蓋の裏っかわで笑います。
そいつはチイちゃんの顔をして、ニンマリ笑うのです。
耳元でズウッと囁き声が聞こえました。妾を馬鹿にする声です。
それがまたアンマリにも八釜(やかま)しいものですから、妾は耳を抑えてへたり込みました。
すると、どうでしょう。その声は目から聞こえてくる事が理解ったのです。


119: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/03/21(土) 22:17:04.63 ID:YCokVBHJ0
常識ナンテ通用しません。
此処はあやかしの地獄なのですから。
胃袋に地獄を作った妾は、チイちゃんによって平穏な世界を奪われました。
チイちゃんに全てを奪われたのです。
そう、全てチイちゃんが悪いのです。
以下略



120: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/03/21(土) 22:19:53.78 ID:YCokVBHJ0
妾はあやかしの地獄の中で、引き出しを開けました。
真っ暗闇の中でしたが、自分の家にいるかのヨウに、妾はスッカリ間取りを理解しておりました。
もしかすると、妾は自分の家にいたのかもしれませんね。
しばらく引き出しの中をひっくり返し、目蓋の裏を這うあやかしを退かして、囁き声を一頻り聞き流しました所で、ようやっとお目当てのものを見つけました。

以下略



121: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/03/21(土) 22:22:14.91 ID:YCokVBHJ0
妾はそれを、右目のあやかしに向けて突き刺しました。


122: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/03/21(土) 22:25:55.66 ID:YCokVBHJ0
ぐちゅり、と音がして、あやかしが散り散りに逃げていきます。
それが面白いものですから、妾はしばらくさじをグリグリとねじ込みました。
ブツリ、ブツリと音がします。しかし、囁き声は聞こえなくなりました。
不思議と痛みはありませんでした。ただ、最後にチイちゃんの泣き顔を見た気がします。
グイとさじを引っ張りますと、右目の中にいたあやかしはスッカリ消えさってしまい、後は左目だけになりました。


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