過去ログ - [オリジナル] The Five Elements 〜New Contract Peach Warrior〜 
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29:名無しNIPPER[sage saga]
2015/02/14(土) 10:52:44.70 ID:638Opjkd0

「――そういえば、さ…… 朱彦…… くん」
「だから朱彦でいいって」
「朱、彦……」
「何だ? まだ何か相談事か? 高くつくぜ?」
「いや、何でもない」
「あー…… 冗談だ冗談。いいよ言ってみろ」
「あのさ――」

 心を許し合えるような人が出来て、この機に尋ねておきたい事が一つ浮かんだ。


「もし目の前にデカい壁があって、それに立ち向かわなければならなくて…… そしたら、朱彦だったらどうする?」


 自分から、他人から、大切な人たちから逃げてきた自分。
 そんな状態で、真実という名の壁が新たに現れて行く手を阻む。
 俺とは正反対な彼、朱彦ならどうするのか…… それを聞いてみたかった。


「――もう答えは出てるじゃねぇか」
「えっ!?」
「立ち向かわなければならない…… 答えは出てるだろ」
「あっ――」


 朱彦はニッと笑う。
 その顔はとても明るくて、輝いていて…… 導いてくれるような気がした。


「――ま、でも逃げてもいいんじゃないか?」
「逃げてもいいのかな」
「ああ。俺はそう思ってる…… 道は一つじゃない」

 そして「まあ…… たかが一高校生が言える立場じゃないけどな」と付け加えて朱彦は語っていく。

「――ダメだと思ったら、別に逃げたっていいんだ。俺の人生だしな」
「でも…… 逃げ続けるのも」

 逃げ続ける…… まさに今の俺だ。

「そうだな。別に逃げたっていい…… だが、逃げちゃいけない道もある」
「逃げてはいけない道?」
「そうだ。それは 自分自身で決めた道 だ」
「自分が決めた道……」
「ああ。もしもの話…… だけどよ。お前がそれまで散々な目に遭って、時に躓いて、時に逃げていたとする……
だけど、 これしかない! これをやりたい! そういう道をようやく見つけたとして……
そしてお前はその道を駆け抜けた。駆け抜けて遂に達成まであと一歩だ!
その地点にお前は着いた。だが――」
「――だが?」
「あと一歩のところで…… ゲームで言うならラスボス直前だ! そこでラスボスという名のデカい壁が現れたら…… さあ、和間はどうする――?」

 ラスボス…… そんなの決まってる。

「ラスボスに挑む」
「そういうことだ――」
「――あ」

 度肝を抜かれた…… 言葉で表すならばそんな状態だった。
 当たり前のことなのに、それでも俺は――

「ま、大抵はラスボスに辿り着くまでに終わっちゃうのが人生ってやつだけどな」
「朱彦…… ほんとに高校生か?」
「失礼な! 俺は老けてない!」
「いや…… そういうことじゃなくてさ」
「うむ…… まあ、ラスボスを見つけるのが人生の楽しみでもあるんじゃねぇの?」
「ラスボスを見つける……?」
「そうそう。それを見つける為なら、それまでは逃げたって、回り道したって別にいいんだ。
ただ、そいつが見つかったら立ち向かわないとな。目の前にはゴールがあるんだ」
「ゴール……」
「そのゴールからまた話が始まるのかもしれないが…… まあ、お前は立ち向かうべきボスがいるってことだろ?
それじゃもう答えは出てるじゃねぇか――」


 そう言って朱彦は笑う。
 優しく、諭すように包み込む笑みだった。


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