19:名無しNIPPER[saga]
2015/02/23(月) 15:33:44.42 ID:zW0LuoBg0
ようやく彼の姿が見えてくる。腕を組みながら佇んでいる。
酷いぞ、親友。私を置いていくなんて。
悪態の一つでもつこうかと思ったけれど、彼は真剣に何かを見ていて。
その目線の先を追うと、大きくて冷たそうな銀色の扉があった。
「お前はエレベーターで来てたみたいだったから知らなかったと思うが、ここは事務所の裏口でな……普段は閉まってんだけど……ええと……」
隅の方にある何個か並んだ丸い植木鉢。
きっと綺麗な花だったであろうものは、茶色く萎れてボロボロになっている。
彼はその植木鉢の一つの前にしゃがみ、中を漁り出す。
「……あった」
手に握られた小さな何か、それは所々が錆びていて。色はまるで鉄くずのようだったけど……その形は普段私も使う見慣れたもの。
……まさか。
泥を払いながら彼はこちらを見て笑う。
ま、待って欲しい、私は状況の早さに呑まれているばかりで、追いつけてない。というか階段を急いで登ったせいでまだ息さえ整ってない。
す、少し深呼吸だけ、させてくれ、心の準備がいる。
そう言ったのに、彼はそんな私の願いを無視してそれをドアに差し込んで。
カチャリと、音が鳴った。
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