197: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 03:50:20.00 ID:Z22ZBlJ80
揺さぶってきた黒服を無視してスポーツカーの助手席で京太郎がこういった。
「一応確認なんですけど、サマナーの世界で物証って証拠になるんですか? あの黒服さんは証拠があるといってますけど。
198: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 03:54:43.68 ID:Z22ZBlJ80
車の外に出て行こうとする京太郎とディーに虎城がこういった。
「ごめんなさい。巻き込んで、本当にごめんなさい」
鼻声になっていた。振り向かなかったけれど、泣いているのだろうと京太郎は察した。
199: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 04:02:50.26 ID:Z22ZBlJ80
黒服の提案を京太郎は蹴った。
「お断りします。構成員襲撃事件の真相を明らかにするというのならば、このような場所ではなく第三者を立ち合わせた場所で行うのが道理でしょう。
200: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 04:08:19.17 ID:Z22ZBlJ80
松常久と黒服たちに向けて打ち出された稲妻は、何の手加減もなくオロチの腹の中を駆け抜けていった。その威力、範囲、迫力ともにすさまじかった。
二十メートルほどある道を丸々飲み込む一本の稲妻。進路上にある装甲車のほとんどは蒸発してしまっている。かろうじて残った装甲車は別の装甲車が盾になっていたためにかろうじて生きのこったものだ。生き残っただけで動くかどうかは怪しい有様であった。
201: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 04:15:00.85 ID:Z22ZBlJ80
戦いの姿勢を作った京太郎を見て、ベンケイが話しかけてきた。自然体だった。まったく緊張の色がない。
「その勇気が命取りになる。自分でもわかるよな? 自分の性格を。
勝てそうにない相手が現れたとしても抗う姿勢。あきらめない気持ち。それは美徳かもしれない。あきらめないことで壁を突破できるかもしれない。
202: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 04:19:02.48 ID:Z22ZBlJ80
オロチの触覚が警戒心を薄めたのを察してベンケイが京太郎に近づいていった。地面に下ろしていた箱をもう一度肩に担いで、スタスタと歩いてくる。そしてオロチの触覚を素通りして、京太郎に箱を突き出した。そしてこういった。
「じゃあ、これ。落し物」
203: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 04:23:16.00 ID:Z22ZBlJ80
オロチの考えることはただひとつである。自分の世界から京太郎を帰さないこと。
ディーよりも厄介な相手が消えた今、目的を達成できる可能性が非常に高くなっていた。動かないわけにはいかないのだ。生ごみのように悪いにおいがする邪魔ものが大量に腹の中にいるけれども、そんなものはどうでもよかった。
三番目に動いたのが、京太郎だった。京太郎は特に何も考えずに、荷物をスポーツカーに運び込もうとしていた。普通なら巨大な木箱はスポーツカーには入らない。何せ後部座席がないのだから、入るわけがないのだ。
204: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 04:27:53.30 ID:Z22ZBlJ80
オロチの不調の原因である松常久たちは悪魔に変身していた。これから戦うつもりらしい。やる気満々である。雄たけびを上げて牙と爪を打ち鳴らしているものもいた。
彼らが、悪魔に変化したときに垂れ流しになったマグネタイトがオロチの体調を悪くさせてしまっていた。食あたりに近い現象である。特にここはオロチの腹の中。しかも触覚がすぐそばにいる。普段ならば、問題ないのだ。
205: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 04:32:44.91 ID:Z22ZBlJ80
京太郎がディーに話しかけたとき、悪魔に変化した松常久たちが、京太郎、ディー、オロチの三人に襲い掛かった。生身の肉体を持った四十近い数の悪魔がみなそれぞれに一番殺しやすい方法をもって襲い掛かっている。
魔法を唱えているものもいれば、牙で噛み付きにかかっているものもいる。刀のような武器を構えているものもいれば、拳で挑んでくるものもいる。
206: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/28(火) 04:37:14.37 ID:Z22ZBlJ80
オロチにしがみつかれたまま戦いを続行しようとした京太郎を見てディーが一歩引いた。ディーの表情は完全に引きつっていた。まさか、この状況で更に一歩前に出るような馬鹿な真似をするとは思ってもいなかったからである。
もしもこのままオロチに引きずり込まれる形で真っ暗闇の世界に落ちれば、間違いなく京太郎はオロチにとらわれるだろう。なぜなら、スポーツカーの調子が悪いうえ、オロチの触覚はすでに京太郎に巻きついている。
道を教えてくれたときとはすでに事情が違うのだ。京太郎をほしがっている自分をオロチは抑えていない。そしてすでに牙は京太郎にかかっている。
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