22: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/03/31(火) 05:18:40.44 ID:w4MVYybr0
自分のこめかみを人差し指で押さえながらハギヨシはこういった。
「わかりました。京太郎君とディーがかまわないというのならばそれでいいでしょう。
しかし、京太郎君の力が向こうで通用するか、はからせてもらいます。もしも駄目そうなら、この話はなかったことにします。
あなたがついていても危険なものは危険ですからね。最低限の力がないと許可は出せません。これは譲りませんよ。いいですねディー。お嬢様も」
ハギヨシにつれられて京太郎たちは中庭に移動していた。中庭に到着したところで、京太郎はずいぶん驚いていた。案内された中庭がとんでもなく大きかったのだ。小学校のグラウンドほどの大きさがある。お金持ちだとは思っていたけれども、ここまでぶっ飛んでいるとは思ってもいなかったのだ。
京太郎たちの移動が完了したところでハギヨシがこういった。
「では沢村さん、出てきてください」
ハギヨシの呼びかけに応じて、中庭にメイド服を着た沢村智紀が現れた。彼女は片手に携帯電話をもっていた。興奮しているらしく青白い肌が赤くほてっていた。
何が始まるのかと京太郎が困っていると、ハギヨシがこういった。
「これから彼女が悪魔を呼び出しますから須賀くんは呼び出された悪魔をたおして見せてください。その結果を見て、お使いにいけるかどうか判断させてもらいます。
ひとつ注意があります。サマナーに直接攻撃をするのはやめてください。これは殺し合いではなく、試験です。
では、はじめてください」
ハギヨシの合図を受けた京太郎は、まず待った。沢村智紀とは二十メートルほど離れている。距離を縮めないのはおかしなところかもしれない。
しかし直接サマナーを攻撃してはいけないという話なのだから、動けない。彼女はまだ仲魔を呼んでいないのだ。
直接攻撃がだめだということなのだから、待たなければならないだろう。当然だが、魔法もだろうし、足元にある小石を投げつけるのもだめだ。
京太郎が待っている間に、沢村智紀が携帯電話を操作して仲魔を呼び出した。
一体だけ呼び出された悪魔はとんでもなく長い髪の毛を三つ編みにしていた。大きくて長い三つ編みがひざまで届いていた。
服装はどこにでもあるティーシャツとジーパン姿だ。現代日本の女性に見える。年は多く見積もっても二十あたり。沢村智紀がこの仲魔を呼び出したのは、彼女が呼び出せる一番強い仲魔だったからだ。
また、京太郎のレベルがはるかに自分から劣ったものであるという考えから、この一体のみで十分だろうと判断した。
呼び出された悪魔を京太郎はじっと見つめていた。人間のように見えるけれども、人間ではない奇妙な雰囲気があった。自分よりもはるか格上が現れているはずなのに、京太郎にはまったく恐れがなかった。
そして不愉快というのもなかった。手伝いを申し出たというのに、面倒くさい試練を行わなくてはならないのに、むしろ楽しそうだった。京太郎は妙に高揚していた。
この様子を見て龍門渕透華は引きつっていた。そしてこういった。
「少し、やりすぎじゃないかしら。京太郎さんは確かレベル二十。実力としては下の中あたりのはず。
魔人になってしまったとは聞いていますけど修行を積んだヨモツシコメを倒せるほどの特殊技能は持っていないでしょう」
龍門渕透華にメイド服を着た井上純が答えた。
「携帯の電源をいれっぱなしにしていた罰を帳消しにしてもらえるかも知れないってんで本気出してんだろ」
京太郎の前に現れた強力な悪魔ヨモツシコメをみてもアンヘルとソックは動じていなかった。試練の結果がどうなるかというのを気にしているだけであった。龍門渕透華と井上純が心配しているレベルという概念について深く考えていないのだ。
まったくあわてもしないアンヘルとソックを見て天江衣は質問を二人に飛ばした。
「アンヘルとソックは参加しないのか? 主が心配ではないのか?
いくら魔人とはいえ鍛えられたヨモツシコメを押し返せるほどのレベルにはなかったはずだぞ?
マグネタイト保有量ならおそらくこの場の誰よりも、おそらく召還されたヨモツシコメよりも、少ないはずだ」
天江衣は京太郎をサマナーだと思っている。純粋に京太郎の心配をしているのだ。
サマナーの実力というのはどれだけ強い悪魔を味方につけているのかで決まってくる。強い悪魔が味方であれば、それだけでサマナーは強いのだ。なのに京太郎は仲魔アンヘルとソックを戦いに使う気配がない。
天江衣たちは京太郎が行方不明者を連れ戻ったとは聞いている。しかしその仕事ぶりというのはアンヘルとソックの力があってこそだと思い込んでいた。
アンヘルとソックが敵を蹴散らし、京太郎はマグネタイトを提供したのだろうと。だから、京太郎が当たり前のように前線に出て、一人で戦おうとしているのはおかしなことだった。
だから、龍門渕透華があわてたり、天江衣が心配したりすることになるのだ。魔人になったといっても、それだけだろうと。
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