過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
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245: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 01:00:54.43 ID:py78Qnqv0

 出口に向かって歩いていく京太郎に、ディーがこういった。

「サンキューな須賀ちゃん。スカッとした」

 少し恥ずかしそうにディーは笑っていた。なんとなく柄じゃないことをやっているような気持ちがしているのだ。しかし、お礼をいいたかった。ここでお礼を言わなければタイミングを失っていつになってもお礼をいえないような気がしたのだ。

 軽く振り返って京太郎は笑って見せた。いたずらが成功して笑っている子供そのものだった。

 パーティー会場はまだ騒がしい。まったく落ち着いていないけれども京太郎は仲魔二人をつれて出て行った。


 オロチの世界につながる門を開いた中庭にディーのスポーツカーが残されていた。

 スポーツカーに京太郎が近づいていった。京太郎の推測が正しければ、スポーツカーの中に京太郎の荷物が残されているはずだからだ。もしかするとどこかに落としている可能性もあるけれども、無事ならばスポーツカーの中にあるはずなのだ。

 ソックを肩車したまま近づくとスポーツカーの扉がガチャリという音を立てた。誰が聞いても鍵が閉まった音だった。京太郎はこのガチャリという音を聞いて誤作動でも起こしたかと思った。ディーの話だと鍵はかけていなかったはずだからだ。

 しかしスポーツカーの扉は京太郎が手を触れると開いた。少しだけ不思議だと思った。しかし鍵が開いているという話だったので、それ以上は考えなかった。

 ただ、肩車されているソックは何か珍しいものを見るような目で、スポーツカーの中を見つめていた。

 肩車していたソックを京太郎は地面に下ろした。両手でソックの胴体をつかみ、少し無理な体勢のままでやってのけた。これから荷物を探すのだ。ソックを肩車したままでやるのは難しかった。ソックを地面に降ろした京太郎は、さっさとスポーツカーの中に入っていった。

 京太郎がスポーツカーの中の不思議な空間の中に入っていくと、スポーツカーの扉がひとりでにしまった。アンヘルもソックも何もしていない。そして扉は勝手に鍵をかけてしまった。その様子を見てアンヘルがこういった。

「私たちは駄目みたいですね。嫌われるようなこと、しましたっけ?」

 ソックが答えた。

「違うと思うぞ。許可されたものだけが中に入れるタイプの結界だな」

 アンヘルがあごに手を当てた。そしてこういった。

「ディーさん器用なことをしますね。呪術方面には疎いように見えましたけど」

 ソックが笑った。

「ハギヨシさんのほうだろうなシステムを作ったのは。それにこの結界は敵をはじく結界じゃない。外に出さないための結界だ。許可制にするのは当然だろうよ。

 よほど厄介なものを封じ込めているらしい。調子はずれのオーケストラが聞こえてきやがる。制限なしで現れたら下級あたりは音を聞いただけで発狂するかもな。

 たぶん風と、火だな」

 アンヘルが笑ってこういった。

「龍門渕は怖いところですね」

 ソックがうなずいた。ソックもまた笑った。


 アンヘルとソックが話をしている間に、京太郎が荷物を持って現れた。しっかりとビニール袋を持っていた。ただ、ビニール袋の手に持つ部分がダルンダルンに伸びていた。誰かがいじっていたのだ。

 荷物が見つかったことにほっとしている京太郎は、扉が閉まっていることに気がついた。しかしたいした問題ではなかった。外に出るために京太郎が扉に手を触れると簡単に開いたからだ。

 そして京太郎が荷物を持って現れたのを見て、喜んでソックが飛び跳ねた。京太郎の下げているビニール袋のふくらみから限定版であると見破ったのだ。

 スポーツカーから出てきた京太郎はビニール袋をソックに渡した。これから風呂を借りようと思っているのだ。京太郎は買ってきた漫画を一番に読まなければ気がすまないタイプではない。

それにタオルで手を拭いてはいるけれど、まだ血液で汚れている部分があるのだ。それをどうにかしないことには落ち着いて楽しめそうになかった。
 


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