過去ログ - 京太郎「限りなく黒に近い灰色」
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90: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:07:39.77 ID:KlUD8s2/0
 京太郎がスポーツカーに戻ったとき、後部座席の不思議な空間で虎城が小さくなっていた。ひざを抱えて震えていたのだ。

 助手席に座った京太郎が心配して虎城にきいた。

「大丈夫ですか? 顔色悪いっすよ」
以下略



91: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:11:56.36 ID:KlUD8s2/0
 ディーは車をいったん止めて、こういった。

「怪しいな。いったいなんだ?」

 明らかに怪しい女性から十五メートルほど離れたところにスポーツカーは止まった。ディーが車を止めたのは、怪しい女性が何かたくらんでいる雰囲気があったからだ。それこそ不用意に近づくとパクっとひとのみにされる雰囲気だった。
以下略



92: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:14:57.38 ID:KlUD8s2/0
 次の道に続く坂道に向けて京太郎は歩いていった。不思議と京太郎は微笑を浮かべていた。恐れはもちろんある。襲い掛かられたとして対応できない可能性もあるのだ。

しかしそれを考えたとしても、目の前の奇妙な女性は魅力的だった。肌がぴりぴりするほどのマグネタイトの圧力。その密度。

「もしも戦いになったとしたらどうなるだろう」
以下略



93: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:18:24.25 ID:KlUD8s2/0
 マグネタイトを吸い上げている怪しい女性にディーが攻撃を仕掛けようとした。怪しい女性の握手から一秒とたっていない。怪しい女性が京太郎に邪念を持ったのを戦闘開始のゴングと受け取ったのだ。

悪魔がマグネタイトを交渉の材料にすることはある。しかしそれ以上を求めようとするのは見逃せなかった。攻撃の態勢に入ったディーの手のひらに奇妙な力が集まり始めていた。小さな粒が次々と生まれ、太陽の周りを回る惑星のように動き始めている。

 戦いが始まるかと思われたが、つかまれていない左手でディーにくるなと京太郎は合図を出した。自分の右手を握る女性の目を京太郎は見つめていたのだ。
以下略



94: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:22:25.77 ID:KlUD8s2/0
 多少のトラブルはあったがディーの運転するスポーツカーはどんどん先に進んでいく。真っ暗闇だった空は気分のいい青空に変わり、土だけだった地面は草原と、人が歩いて作ったのだろう細い道に変わっている。

 車が走るような舗装されている道ではない。しかしスポーツカーは先に進むのだった。何とか真っ暗闇の世界から抜け出すことができたけれども、まだまだ龍門渕に戻れるような状況ではないのだ。

安心したいのならば、蒸気機関が動き、空がさび付いている世界まであがる必要がある。さび付いた世界まで戻れば、後は力押しで戻っていけるだろう。
以下略



95: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:26:48.59 ID:KlUD8s2/0
 完全に青ざめている虎城に一拍おいて京太郎がこたえた。

「一応サマナー扱いなんだと思いますよ」

 虎城の質問の意味が京太郎はさっぱりわかっていなかった。京太郎は不思議そうにして、ディーのほうをちらりと見た。ディーが助けてくれないかなと期待したのだ。
以下略



96: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:32:15.99 ID:KlUD8s2/0

 逆に呪術と呪物創作ではまったく京太郎は役に立たない。ウエストポーチの中に入っていた改造マッスルドリンコのような簡単な創作物でもアンヘルとソックの足手まといになる。それこそ手取り足取り、しっかりと手順を耳元でささやかれながら創作しても、失敗する可能性がある。

 これは京太郎が馬鹿だからではなく、アンヘルとソックの「できて当たり前」が非常に高いところにあるからおきるのだ。歩き始めたばかりの赤ん坊に、オリンピック選手のような走りを要求するくらいには「当たり前」が離れたところにある。

以下略



97: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:36:55.59 ID:KlUD8s2/0
 京太郎が説明をするとディーがこういった。

「あぁ、わかるわかる。俺もそんな感じだわ。携帯電話がなくても職場に毎日顔出すからいらないんだよね。

直接連絡を受けることのほうがはるかに多いし。着信履歴は家族と仕事関係ばっかりだわ。携帯電話より家の電話を使ってるほうが多いかも」
以下略



98: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:40:11.11 ID:KlUD8s2/0
 困っているものが二人にふえるとディーがこういった。

「人力ってのは機械に頼らずに悪魔と契約をするってことだな。パソコンが普及する前は才能を持った人間しかサマナーになれなかった。

 十四代目みたいなタイプだな。ハギちゃんもベンケイさんもこれだ。
以下略



99: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:44:11.20 ID:KlUD8s2/0
 ディーの説明を聞いた虎城は顔色を真っ青に変えてこういった。

「神話の時代? つ、つまり……真正の魔人? 確かにそれなら理屈は通るけど、そんな馬鹿な話があるわけがない。

 不死性を捨てるリスキーな契約を結ぶ悪魔がいるわけがない。それに、仮にそうだったとしたら、須賀くんは魔人?
以下略



100: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/04/14(火) 05:48:55.20 ID:KlUD8s2/0
 岩が生え始めて三分後、スポーツカーは運転をやめていた。道がほとんどなくなってしまったからである。

視界のほとんどが岩で埋め尽くされて、引き返すこともできなくなっている。一応道はあるのだ。スポーツカーの前に一本道である。進めばいいところだけれども、少し気が引けるのだ。

というのが、一本道の向こうには円形の空間がある。半径十メートルほどの円形の空間だ。ここは普通の草原だった。
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