過去ログ - モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part12
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◆OJ5hxfM1Hu2U
[sage saga]
2016/02/10(水) 16:37:05.79 ID:jNcq/NRi0
センジュカンノンの双子の弟ロータスパイダは野良ヒーローにしては羽振りが良く、往年のホンゴエ・タコシもかくやのプール付き豪邸に住んでいるという。
……そして情報に偽りはなかったようだ。アイは高圧電流有刺鉄線の張られた塀を難無く飛び越え、ロータスパイダ邸の敷地内にエントリーした。
(さて、どこにいるものやら。これだけ広い屋敷となると……)
目を閉じ、耳を澄ます。微細なモーター音が多数、そして水音。……プールだ。遠い。現在地点への奇襲可能性はおそらく無し。
アイはセントリーガン・ビッグドッグや即死トラップ、地雷原を入念に回避、あるいはしめやかに破壊しながら音の方向を目指した。
およそ十分後、アイは生け垣の陰から目的のプールの様子を窺っていた。モーター音は今やはっきりと聞こえる。
水面には一人の男。まだ二月だというのに上半身裸だ。腰の生体動力ユニットから生えた十本のサイバネ脚が放射状に広がって水を掻き、その上にアグラしている。
さながらロータス上に座すブッダ。ターゲットのロータスパイダであろう。
「バカ兄の手の者か。脚を増設した時から、こうなることは予想しておったわ」
ロータスパイダは目を開き、アイの潜む生け垣を見据えた。美男ながら怒るセンジュカンノンさえ比較にならぬ気迫! まさしく猛者に相違あるまい!
しかしアイは怯まぬ。襲撃が予測されていた? 構うものか、どのみち戦うためには姿を見せねばならぬのだ。彼女はプールサイドに踏み込み、獲物に宣戦布告する。
「貴様がロータスパイダだな? その脚を三本ほどへし折らせてもらう」
「ロータスパイダ? ハッ、それは先週までの名よ! 今の俺はロータスクード! そして覚えておけ。雇われめ、貴様を浄土に送る者だッ!」
ロータスパイダ改めロータスクードは生体動力ユニットに内蔵の水圧ロケットを噴射し水面から跳躍、空中で巧みに姿勢制御し、アイ目掛けて急降下!
先端に鋭い高振動クローを備えた十本のサイバネ脚が悪魔の両手めいてアイに迫る。掴まれたが最後、骨ごとクズ肉となるであろう。
「ふむ、数が多いだけではないな。稼ぎ相応の質、だが使い手の方は」
「ゴチャゴチャうるせェ! イヤーッ!」
ロータスクードは未だ冷静な傭兵を訝しんだ。彼女は彼の必殺攻撃を躱そうともせず、不敵に微笑むばかり。何か策が? 否、どうでもよいことだ。バカは死ぬのみ。
彼の闘志と裏腹に、サイバネ脚はあくまで無機質に閉じんとする。残るのはプールサイドのコンクリート残骸と肉塊だけだ。ガキン、と堅い感触。
……だが、それだけだった。ロータスクードは地上から1メートルの高さに浮いていた。サイバネ脚も閉じきらぬ。
「バカナ! どういうことだ! メンテナンスは欠かしていない!」
「安心したまえ、動作不良ではないさ。少しばかり過負荷をかけさせてもらってはいるが」
ロータスクードの真下から、涼しい声。彼自身のサイバネが遮り目視できぬが、おそらく傭兵は無傷だ。
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