過去ログ - アストルフォ「ボクがジークを幸せにするんだ!」
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◆BAKEWEHPok
[saga]
2015/04/14(火) 00:07:38.74 ID:RAbBuj+Vo
「ボクもだ……! うん! ……うん! 好きな人とキスするとね、心地がよくて気持ちよくて幸せな気分になるんだ!」
三つ編みがパーカーの耳と一緒にうさぎのように跳ね回る。
「マスターに知ってほしいんだ! 世界にはそんな幸せがいっぱいあるって言う事を!
使命は大切だしホムンクルスのみんなもサーヴァントの仲間達だって守れたらいい!
でも死んでしまったら、これから得れるかもしれない幸せを想う事も感じる事もできなくなっちゃうんだ!」
「そうか……ありがとうライダー。誰かと共に未来へ想いを馳せる……
人間なら当たり前の事すら想像もできないくらい俺は幼いんだな」
「いいっていいって! ジークはたった今知ったんだもん! これからこれから!
仮令ボクが弱くたってさ。聖杯戦争に勝ってマスターを幸せにしてあげるんだから!」
燦々と太陽を浴びている向日葵のような笑顔。
誰だってこんな風に笑いかけられれば、嫌でも幸せな未来を想像してしまうに違いない。
しかしジークは若干空気が読めていなかった。
「だがライダー。気持ちは伝わったのだがこういった事は普通異性同士でするものではないのか?
俺とライダーはおと―――」
「むぅぅぅぅぅ………………ジークの大バカ野郎ーーーー!!!!!!」
爆弾が連鎖爆発するイメージ。どんっと怪力でジークは押されてベッドへ倒される。
マウントポジションを奪われ、下から見上げるライダーの表情に表れたものは烈火のごとき怒り。
ジークフリートの記憶で垣間見た邪龍ファヴニールもかくやという有り様だ。
もし竜の夢を見た後、寝起きにこんなライダーを見ようものなら英霊の心臓を持ってしても不整脈は免れないだろう。
「もー全然わかってない! ボクがジークを大好きで! ジークもボクが大好き!
それだけで十分でしょ……!? そこに男とか女とかなんの違いもないでしょうが!」
「しかしキスとは生殖に繋がる行為では……」
知識だけが優先しているとはいえ、常識的な発想で口答えしようとするジーク。
やはりどうしてもそういった感情には疎いらしい。
いよいよもって大好きの基準が二人の間でズレていると感じなくもなかった。
けれどもそのズレは続く言葉でカチリと噛み合う。
「だったら……! 前にジークは自分が死んでもボクに他の魔術師を充てがえればいいって言ったよね!?
それならジークはボクがジークじゃない他の誰かとキスしてもいいの!?
ジークを放っといて別のマスターと気持ちよくなって幸せになってもジークはどうだっていいの!?」
「な……!」
賭けとも言えるライダーの問い掛けを聞いて、言葉が出なくなる。
確かに言った。ユグドミレニアには他のマスター資格者のがいるから問題はないと。
ただライダーとキスを終えたばかりのジークの心には音叉のごとく強く響いた。
あり得るかもしれない未来を思い描いただけに揺らがされた。
自分が発した言葉はそんなにも残酷なものだと理解したのだ。
もちろんライダーがそんな事をするとは思っていない。考えもしない。信仰すらしている。
自分だってマスターを辞めるなど三千世界を巡っても有り得ない。
それだけにライダーの口から聞く言葉は衝撃的だった。
「…………どうでもよくない。ライダーに去られるのは困る。そんな未来ならいらない」
「ジーク…………」
応えるライダーの顔がぼやける。
ほんの三言。それだけの間でジークの瞳には涙が溢れていた。
例えでも聞きたくはない想像したくもない言葉は、得難い未来を感じたばかりのジークの心を強く苛んだ。
「ごめんねジーク……ウソだよウソ。絶対有り得ない。ボクがジークから離れるはずないじゃないか」
ライダーがジークを抱きしめ、涙ぐんでいる瞳を唇で拭っていく。
まるで親猫が子猫の毛づくろいでもしているよう。
愛情いっぱいに頭を撫でながら抱きしめてキスを繰り返したりと慰めている。
「ごめんね……ボクがジークをどれだけ大好きか証拠を見せてあげるから」
「……っ!」
上から覆いかぶさってくるライダーのキスにジークは目を見開き驚いた。
今度のキスは唇を擦れ合わせるだけじゃなくて、ぬめる舌で口内を掻き回してきたのだ。
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