3:名無しNIPPER[ ]
2015/04/20(月) 22:24:12.12 ID:7DByVA9h0
「スー……スー……」
文字通りの『目と鼻の先』から聞こえてくる、少女の寝息。彼女の名前は『朝潮』。
真面目な性格で強い責任感を持つ、利口な少女。そんな彼女は今、私の膝の上で、スヤスヤと眠っている。
4:名無しNIPPER[ ]
2015/04/20(月) 22:26:31.03 ID:7DByVA9h0
我が鎮守府は、国に命じられていた深海棲艦の撲滅に成功した。現在、特別調査隊が生き残りの調査をしているらしい。それも、もう少しで終わる見込みと聞いている。
最後の決戦で秘書艦を務めた朝潮は、その後もずっと、秘書艦をやってくれた。他の艦娘たちは、外出許可を取って遊びに行ったり、解体後の生活の準備をしたりしているにも関わらず――
朝潮は、戦争が完全に終結するその時まで任務を遂行する、と言って、今日も私の隣で、ただただ読書をしていた。
5:名無しNIPPER[ ]
2015/04/20(月) 22:27:55.32 ID:7DByVA9h0
一一〇〇を回る頃、艦娘の『赤城』が、私たちに差し入れを持ってきてくれた。
「コンビニエンスストアに寄ったら、美味しそうでしたので差し入れに。新商品みたいですよ!」
赤城がくれたのは、有名アイスクリームメーカー、ハーゲンダッツの、カップアイスのチョコミント味。蓋には『期間限定』の文字と、爽やかなミントの写真。
6:名無しNIPPER[ ]
2015/04/20(月) 22:29:13.76 ID:7DByVA9h0
「悪い、ミントが苦手なんだ。良ければ食べてくれないか?」
「えっ、良いのですか?」
「ああ、食べてもらえた方がありがたい」
7:名無しNIPPER[ ]
2015/04/20(月) 22:33:20.36 ID:7DByVA9h0
一二〇〇頃、朝潮の顔が赤くなっていることに、私は気が付いた。
「朝潮、顔が赤いが、大丈夫か?」
「はい? はい、朝潮は大丈夫です!」
8:名無しNIPPER[ ]
2015/04/20(月) 22:34:37.10 ID:7DByVA9h0
「……しれいかん」
そして彼女は、自発的に、私の膝の上に乗ってきた。おまけに、私の腕に頬をこすりつける。
「しれいかん……」
9:名無しNIPPER[ ]
2015/04/20(月) 22:35:36.04 ID:7DByVA9h0
もしかしたら、あのアイスクリームに何かが入っていたのかもしれない。くずかごからカップを拾い、成分表を確認してみたいのだが、今はそれができない。私の膝の上で、朝潮が眠っているからだ。
また、朝潮を私のベッドに寝かせたいが、それもできない。膝に座っている彼女を、どうやって持ち上げれば良いのかが、分からない。
そして私は数分、朝潮の頭を見つめていた。
10:名無しNIPPER[ ]
2015/04/20(月) 22:37:26.51 ID:7DByVA9h0
軽い体重、小さな肩、やわらかそうな頭皮。私はだんだんと、この朝潮が、可憐で、あどけない存在に思えてきた。思えば、私もどこか、おかしかったのかもしれない。
『守ってあげたい』
きっかけは、ちょっとした出来心だったのだろう。私は朝潮の頭に手を伸ばし、頭を撫でる。そして気付いたときには、私は、両腕を朝潮の腹の前に回していた。徐々に力を入れていく。
11:名無しNIPPER[ ]
2015/04/20(月) 22:38:17.43 ID:7DByVA9h0
ぎゅっ、と、私は朝潮を抱きしめた。やわらかい体、小さい体、もっと力を込めれば折れてしまうのではないかと思えるほど、かよわい存在。
「……んっ……」
朝潮が声を上げた。しかし私は、朝潮を抱くのをやめない。
12:名無しNIPPER[ ]
2015/04/20(月) 22:40:00.66 ID:7DByVA9h0
その後、私は朝潮を横向きに座らせ、朝潮をお姫様抱っこする。
そして私のベッドまで運んだ。暑苦しいと思い、上から布団は掛けない。私はそのまま机に戻った。
夕飯の頃にちょうど、朝潮は起き上がった。自分が上官のベッドに寝ていたことに動揺しながら、私に何度も謝ってくれた。私はもちろん許した。そして私の希望で、執務室で一緒に夕飯を食べた。朝潮の表情は、どこか楽しそうに見えた。
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