13:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:32:48.62 ID:Gk/WojOoo
「遅かったですね」
プロデューサーさんは私を見て、デスクから腰を上げようともしないまま言った。
14:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:33:17.63 ID:Gk/WojOoo
「なにか言わないんですか」
「ええ。次、頑張りましょう」
15:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:33:46.18 ID:Gk/WojOoo
高いところだから、風が強かった。馬鹿と煙は高いところが好きだと言う。
じゃあ、もっと高いところへ登ってやろうと、屋上の隅にあぐらをかいている貯水タンクのはしごに足をかけた。
その頂上へ立ったとき、ちょうどプロデューサーさんが屋上のドアを開けた。
16:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:34:14.27 ID:Gk/WojOoo
「夢だったんですよ! ずっと、アイドルはぁ!」
私が言うと、プロデューサーさんは神妙な面持ちで言い返してきた。
17:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:34:43.81 ID:Gk/WojOoo
「それでもナナは! ウサミン星からやってきたウサミン星人なんです!」
「夢を与えたって誰もがそれを忘れる。そして、あとになって笑う。子ども騙しだと」
18:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:35:13.50 ID:Gk/WojOoo
「信じたものがそこにあるんだって、教えてくれたのは貴方じゃないですか!」
「誰も信じなくなった! ティンカーベルは消えた、ネバーランドも」
19:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:35:59.13 ID:Gk/WojOoo
「僕は……もう、子どもじゃないんだ」
「知ってます。私も貴方も、そう」
20:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:36:33.38 ID:Gk/WojOoo
お父さん、お母さん。すみませんでした。親不孝な子でした。
せめて、晴れ姿を見せたかった――。
思い出が次々に頭に浮かんでくる、走馬灯のように? というらしい。
21:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:37:03.55 ID:Gk/WojOoo
「助けてっ! ピーターパン!」
何秒経った? アドレナリンが……ああ、いや、それとももうすでに?
22:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:37:36.52 ID:Gk/WojOoo
彼は泣いていた。弱い月影に水銀のような涙を流して、彼は私の肩をしっかりと抱いていた。
「菜々は、本当に僕のことを信じてくれていたんだね」
23:名無しNIPPER[sage saga]
2015/05/11(月) 23:38:22.13 ID:Gk/WojOoo
なんだか不思議な時間だった。なのに、妙に頭は冴えていた。
十時間くらい寝たあとみたいに。
涙で濡れた彼の頬を撫でると、ヒゲがチクチクした。
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