7: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:48:33.92 ID:WT24WuKIo
とはいえ彼女はしっかり者だった。
遊ぶことなく、誘いに乗らず。
強引な輩は酒場のマスターたる父親が、優しく丁寧にひねりつぶした。
8: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:49:03.90 ID:WT24WuKIo
そんな会話もうれしかった、と彼は言う。
そのうちすぐに成り上がるから、そしたら約束守ってくださいよ。
彼女が笑顔でうなずくのを見てますます仕事に取り組んだ。
9: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:49:42.98 ID:WT24WuKIo
彼が自嘲するのはもっと馬鹿をやったからだ。
「広場の片隅、いつも通り靴磨きをやってる時だった。その客が俺に言うんだよ。
稼ぎのいい仕事があるんだが、ちょいと手を貸してはもらえんか?
10: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:50:44.04 ID:WT24WuKIo
結果からいって、彼は十分すぎるほどの額を得た。
そしてその分失った。
11: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 18:07:37.43 ID:WT24WuKIo
簡単に言えば運び屋だ。
出所の怪しい物品を同じく怪しい輩の手から手に。
汚い生業をする者のいわば保険というところ。
12: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 18:08:09.47 ID:WT24WuKIo
罪悪感がなかったかと言うと、それは微妙なところらしい。
「まあ割をくった奴もいたんだろう。
だが言ったはずだが俺は馬鹿だ。当時の俺はさらに馬鹿。
13: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 18:08:40.58 ID:WT24WuKIo
彼はそう言うけれど、仕方のないことではあったろう。
どうしようもないことは世にいくつもある。
「彼女に会いに行くのは怖かった。
14: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 18:09:14.57 ID:WT24WuKIo
彼は小さく荒れたらしい。
いや沈んだと言うべきか。
部屋にこもって酒だけ飲んで時々唸り声を上げた。
周囲は少し怖がった。
15: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 18:10:22.63 ID:WT24WuKIo
それから。
16: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 19:55:31.56 ID:WT24WuKIo
彼は彼女をあいつと呼ぶ。
「あいつはそれまで見てきた女の中でダントツに色気のねえ奴だった」
17: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 19:56:55.90 ID:WT24WuKIo
それでも縁はあったようだ。
「未練がましく彼女のことを思い出して飲んでたあるとき少し飲みすぎちまったらしい。
泥の中を這うような夢を見て、目が覚めるとどこか小さな部屋だった。
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