過去ログ - モバP「不夜城は、眠らない」
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57: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/18(木) 22:30:52.10 ID:MUuaVWOfO
ああもう、こんな厭―いや―な気分になるのは、ぜんぶ雨のせいだ。

自分勝手な八つ当たりを、天気という自然現象に向け、傘を退けて暗い空を睨む。

次の瞬間、強い雨脚は、まるで嘲嗤うかのように僕の顔面を殴りつけた。
以下略



58: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/18(木) 22:31:52.58 ID:MUuaVWOfO
「――何やってるの、アンタ?」

ふと、聞き覚えのある声が、僕を呼んだ。多少の呆れた感情も交じったような口調だ。

慌てて声のした方を向く。
以下略



59: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/18(木) 22:32:44.55 ID:MUuaVWOfO
相変わらずの無愛想な眼と唇――

しかし今日の彼女は、先日とはまるで印象が違った。

傘も差さずに立ったまま、雨に濡れそぼつ身体をどこぞの軒下へ隠そうともしない。
以下略



60: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/18(木) 22:33:41.23 ID:MUuaVWOfO
「さっきまで何ともなかったのに、いきなりこんな降り出すなんて思いも寄らないでしょ普通」

傘を彼女の上へ掲げながら問うと、『濡れ鼠』と云う語がやや気に食わなかったのか、目つきが若干鋭くなった。

それにしたって、降り出したら地下なり建物なり、どこか雨宿りをすればいいだろうに。
以下略



61: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/18(木) 22:34:37.90 ID:MUuaVWOfO
なんでも、建物内だったり改札が目と鼻の先にあったりすると、誘いを断られる比率がぐんと上がるらしい。

僅かな理性を優先して、円光と云う非日常への甘い誘惑と人の目を振り切り、建物から出ずに邁進すればいい。

眼前の機械にPASMOをタッチしてしまえばいい。
以下略



62: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/18(木) 22:35:52.04 ID:MUuaVWOfO
「そう云うこと。……くしゅん!」

少女は小さく頷いてから、三度、小さいくしゃみをした。

びしょびしょに濡れている上、気温もだいぶ下がった。体温を奪われるのは必定だ。
以下略



63: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/18(木) 22:38:38.89 ID:MUuaVWOfO
「……ありがと」

やや遠慮があるのだろうか、そそくさと四つ折りされたままの生地を顔に当てるだけで返してきた。

先日の強引な態度とは打って変わったその仕種に、僕は非常にミスマッチさを憶えた。
以下略



64: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/18(木) 22:40:22.85 ID:MUuaVWOfO
今夜は円光なんかやめて、大人しく帰った方がいい。

タクシープールの方へ行こう、と促すと、彼女は首を横に振った。

「こんな、水が滴るほど濡れた状態で乗ったら厭な顔される」
以下略



65: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/18(木) 22:42:11.67 ID:MUuaVWOfO
「……煩いな」

僕の思考が独り言として漏れていたらしい。

まるで、私を円光わないなら邪魔だから退け、とでも云いた気の、鋭い目つきを僕に向けた。
以下略



66: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/06/18(木) 22:43:39.70 ID:MUuaVWOfO
身体は壊してないだろうか。寝込むことになってしまわないか。

いくら他人とはいえ、少しでも関わりを持った以上は、そう云った思考を振り払うのは難しい。

完全に関わることなくスルーするか、さもなくば徹底的に付き合うかのどちらかにすべきなのだ。
以下略



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