309:名無しNIPPER[saga]
2015/07/07(火) 23:30:08.79 ID:pJv3maSDO
「私、幸せよ? 今だってそう」
「そんなことはないでしょう」
「あるの」
笑顔でミレイは言った。
「私ね、この学園が好きなの。教室で受ける授業も、みんなでする食事も、屋上から見える風景も……全部好き」
「…………」
「だから、この学園で過ごした人全員に、その思い出を大切にして欲しいって思ってる」
こうして学園を案内してくれている理由が理解出来た。そして今の言葉が、彼女の本心だという事が痛いほど分かった。
他人に優しくするのは優越感に浸りたいからではない。憐れんでいるからでもない。誰かが幸せなら、彼女も幸せなのだ。
凄い人だと思う。この先、自身が記憶を取り戻したとしても、このようにはなれない。ライにはそんな確信があった。
いつも他人との距離を気にしている自分が、どこまでも矮小で卑しく思えた。
「だいたい、人のため誰かのためって動いてるのは、あなたも同じでしょう?」
「え……」
なんていうかな、とミレイは呟いた。頭の中で、言葉を整理しているように見える。
「スザク君のためにノート取るのも、生徒会室でいない人の分の仕事をしてるのも、記憶を探してるのも……全部。なんだか、義務感で動いているように見えるから」
「それは……」
口ごもる。反論出来なかった。
「私は、あんまりそういうのって良くないと思うな」
1002Res/860.00 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。