過去ログ - 万里花を愛でるニセコイSS「ハナヨメ」
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13:名無しNIPPER
2015/06/20(土) 23:24:29.29 ID:EUGrH/Tp0
ずずず、とジュースをストローで吸い込みながら、万里花の様子を伺う。
万里花はなんだか長い名前のコーヒーのカップを口元に当てたまま、飲むでもなく、上に浮かぶホイップクリームをじっと見つめていた。

「なぁ、橘……」
楽の呼びかけに、一呼吸遅れてから万里花が顔を上げる。

「その、ごめんな。こんなことになっちまって……」
「どうして楽様が謝られるのですか?」
「いや、わかんねーけど、お前がでもすごく楽しみにしてたのは知ってるからさ。それになんていうか、花嫁衣装は女の子の夢? とかって言うだろ?」
「夢……そうですわね、確かに夢ですわ」

ワンピースのお腹の辺りの布をギュッと握りながら。


「私が色々と想像する楽様との幸せな日々の中でも、やっぱり一番の夢。楽様の隣で、ウエディングドレスを着て、素敵に笑うんです。とっても幸せな……夢」
でも……と唇を少しだけ噛む。

「でも、叶わないんじゃないか、って。夢でしかないんじゃないか、って。そんな風に思ってしまうこともいっぱいありましたから……だから、今回のお話を聞いた時は、本当に嬉しかったんです」

万里花らしくない弱気な言葉。いつもなら、恋も夢も自ら掴み取るものですわ、なんて言ってはばからないはずなのに。

「ごめんなさい、楽様。こ、こんなことで、楽様を困らせるつもりなんて、あ、ありませんでしたのに……」
ポロポロと涙が溢れる。肩を震わせながら、それでも泣き声を上げることだけは必死で我慢しながら。


楽は自分が勘違いをしていたことに気が付いた。

万里花が楽しみにしていたのは、ただ素敵な花嫁衣装を着る、というイベントではなかった。
ずっと夢に見ていた、一条楽との結婚式。それを実現する機会だったから、だからこそ、あんなに一生懸命だったのだ。


「お嬢様にはもう……あまり時間が残っておりませんから」


その言葉にどんな意味があるのかわからない。
だけど、あの万里花に、夢は夢でしかないなんて、諦めを感じさせるようなものだとしたら。

楽は背中にゾワリとしたものが走るのを感じた。


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