過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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154:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:18:58.10 ID:KP3+ivsDo
「雪ノ下先輩でも動揺することってあるんですね」
考え事をしながらこぼしてしまった紅茶を拭いて後片付けをしていると、一色さんが意外そうに呟いた。
「私だって動揺することぐらいあるわよ、人だもの。一色さんの言葉が、その……あまりにも荒唐無稽だったから。比企谷君は養われる側なのだから、そんなに偉そうな態度の亭主になれるわけがないじゃない」
155:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:20:01.30 ID:KP3+ivsDo
「うわー……。ごめんなさい先輩、その夢は捨ててもらっていいですか。ちゃんと稼げるようになってください。あとさっきの亭主関白みたいな態度もノーセンキューです」
「なんでお前基準で俺が夢を変えにゃならんのだ。ほっといてくれ」
私の言葉を受けて二人の会話が続いた。私のぎこちない動きと態度をさほど気にされてはいないようで、ほっと胸を撫で下ろす。
156:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:21:16.20 ID:KP3+ivsDo
私が認めたくない、見下していると言ってもいいのは、私のことをよく知りもしない、話したこともろくにないのに外見だけを見て、私に好きだとか言ってくる輩の言うところの好意だ。
そんなものにはなんの価値も興味もないが、ちゃんと相手と話し、その人となりを知り、時間をかけて育んだ上での好意というものは私にだって理解できる。そうでないものは認めないし、認めたくない。
だから、ある過去の経験から人との対話を半ば拒絶してきたに等しい私はそういうものを受け入れることはなく、そして他人に向けるということもなかった。
157:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:22:51.41 ID:KP3+ivsDo
彼と過ごす時間が長くなるにつれ私の信念や思い、心は無自覚に彼に引かれ、惹かれていった。
それがいつからかと聞かれれば、最初からと答えるほかない。私は彼と出会ってから、そこから全てが始まったのだから。
彼との出会いが私に変化をもたらした。いや、回帰と呼ぶべきかもしれない。
158:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:24:14.83 ID:KP3+ivsDo
そうして迷い戸惑う私を先導するように歩く彼の姿は頼もしく、私が追うべき新たな光のようにも感じた。
だからこそ、そのあとの出来事に、彼のやったことに私の心は千々に乱れた。
彼と私が共有していると考えていた唯一のもの、それは共有などできていなかったと。
159:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:25:37.76 ID:KP3+ivsDo
彼の答えは変わらないというものだった。そのとき、深い失望が私を襲った。
だが、他人に勝手に期待して、勝手に裏切られたと感じた、その醜悪で手前勝手な私の思いが一番おぞましいものだとも思った。
そんな中、一色さんからの依頼が舞い込んだ。
160:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:27:54.37 ID:KP3+ivsDo
「えー、これ耐熱でもないから、熱くて持ちにくいし不便ですよぅ」
「一色さんも持ってきて構わないわよ。このあと比企谷君のも買いにいくことだし」
「え、そうなんですか?誰とです?雪ノ下先輩と二人で?」
161:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:29:56.77 ID:KP3+ivsDo
「歩くなよ、走れ走れ。ランニングコストな。まあ走るって意味でもねぇけど」
「んん?じゃあパパがYシャツの中に着てるやつ?ほらヒッキー、冷やすから手貸して」
「ん、あ?おお?」
162:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:33:45.88 ID:KP3+ivsDo
「え、ええ。別に構わないわよ」
ここまで話して一色さんだけ除け者というのも可哀想だ。彼女からそう言っているのに、断るわけにもいかないだろう。
「よかったー、ありがとうございます。じゃあ部活終わったらまた生徒会室来ますねー。あ、紅茶ご馳走さまでした」
163:名無しNIPPER[sage saga]
2015/07/12(日) 17:35:15.51 ID:KP3+ivsDo
比企谷君の手を見ると、火傷をした指に由比ヶ浜さんのハンカチが巻かれていた。
女物のハンカチというのが不釣り合いではあるが、遠目に見れば包帯に見えなくもない。
「えー、そんな発明みたいに言われてもな。これいつ返せばいいんだ」
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