過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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727:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:03:39.37 ID:vhSqVbECo
雪ノ下からの返事がないので目をやると、姿勢正しく腕を組んだまま俯いている。というより、頭が垂れ下がっている、項垂れているというほうが正しいか。
「ゆきのん?」
由比ヶ浜が席を立ち、見えなくなっている雪ノ下の顔を下から覗き込む。
728:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:04:21.96 ID:vhSqVbECo
「ああ。……少しでも、力になれてたらいいんだけどな」
庶務としての雑用ならたくさんやったが、あんなのは別に俺じゃなくたって何も問題ない。力になれたと俺が断言するのは、俺でなくてはならない何かを果たしてからにしたい。
やっぱり傲慢だな、俺は。特別なことを雪ノ下と由比ヶ浜に求めすぎだと我ながら思う。
729:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:05:19.11 ID:vhSqVbECo
自分に甘めな評価をするだけなんですけどね。ただそれでも良いところより悪いところのほうが多く目に付くのが悲しい。
「あはは、そりゃヒッキーはいいとこいっぱいあるもん。羨ましいな……」
由比ヶ浜の声音が語尾に向かうにつれて弱くなっていくのを聞いて、言葉に嘘はなさそうだと感じた。こいつは心からそう思っているようだ。
730:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:06:09.01 ID:vhSqVbECo
「……何が」
「三人の新しい居場所で、生徒会でいろいろやれてさ、いろはちゃんも隼人くんもいて……。今、楽しいの。あたし」
「それじゃ答えになってねぇだろ」
731:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:08:18.47 ID:vhSqVbECo
胸が詰まる思いがして返事をすることはできなかったが、由比ヶ浜も別に返答を求めてはいないようだった。
このままでなくしてしまうのは俺かもしれない。当然壊すだけで終わらせたいわけじゃないが、静かな水面に石を投げ込むような行為をしようとしているのはわかっていたから、何も言うことができなかった。
会話が途切れ静かになると、雪ノ下の微かな寝息だけが聞こえる。
732:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:09:51.36 ID:vhSqVbECo
そこには頬を朱色に染めながらぼんやりと外を眺める由比ヶ浜がいた。
声を発することはないが、確かにここにいると寝息だけで主張する雪ノ下がいた。
そしてともすればそんな幸福な時間を甘受してしまいそうになる俺がいた。
733:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:10:38.43 ID:vhSqVbECo
居場所とは、心の拠り所のことだ。
なら俺のすべきことは、思いを言葉に変換することだ。
「なぁ由比ヶ浜。蒸し返すけど、あれはよかったのか、本当に」
734:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:11:38.79 ID:vhSqVbECo
忘れろと言われてもそんなこと俺には無理だ。立ち止まったままでどうしようもない俺に、自ら踏み込んでくれた由比ヶ浜に俺は何も返せていない。
感情の処理の仕方を知らず適切な距離というものがわからないことを理由に、いや、言い訳にして何も応えていない。
どう答えるのが正しいかなんて未だにわからないが、今の俺がどう思われていようと、俺がどう思っていようと、由比ヶ浜にきちんと向き合わなくてはならない。
735:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:12:27.90 ID:vhSqVbECo
「……ゆきのん」
「起きてたのか」
「二人の声で目が覚めたのよ。由比ヶ浜さん、私は……」
736:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/25(金) 00:13:33.54 ID:vhSqVbECo
二人だけで完結しそうな会話に慌てて割り込む。
「なんでって、これからも三人でいられたらいいなって思うの、変かな」
「違う、そうじゃない。それは俺も同じだ」
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