過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
↓ 1- 覧 板 20
2015/10/17(土) 16:55:15.78 ID:kAKMmD4ho
 だが、俺は彼女達にはこれが似合うのではと考え、当人の色の好みと違っていたとしても、それでも構わないと結論付けた。それだけ…………じゃないよな。 
  
 自分でも薄々わかっている。根底にあるのはおそらく、ただの独占欲。彼女達のことは俺が一番わかっていると、そう思い込みたかった。 
  
 だがこれを赤裸々に語るには時期尚早な気がする。というか言っても大丈夫なことなのかよくわからない。 
898:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:55:56.41 ID:kAKMmD4ho
 「ん、まぁ……そうだな」 
  
 俺が言おうとしたことそのまんまだったので少し驚いてしまった。伝えようとしたのは、ちゃんと自分で考えた、というその一点だったからこれでいいはずだ。 
  
 「そう……」 
899:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:56:41.86 ID:kAKMmD4ho
 「今髪に付けるといきなりでちょっと目立つから、ここで……」 
  
 「あはは……そうだね」 
  
 二人はシュシュを腕につけ、よく見えるよう胸の高さまで上げて見せた。袖口で青とピンクの花が揺れている。 
900:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:57:36.58 ID:kAKMmD4ho
  
 鍋とチキンによる和洋折衷の騒がしい夕食も終わり、食後に出てきたケーキもありがたく平らげることができた。 
  
 ブッシュ・ド・ノエル。 
  
901:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:59:14.85 ID:kAKMmD4ho
 俺はこれからも、俺の意思や意図と無関係に関わる人間を傷つけてしまうのだろう。 
  
 その傷を見て、俺も後悔と痛みに苛まれるのだろう。でももう、そんなに苦しいなら最初から関わらなければよかったなんて思わない。そう決めている。 
  
 その後全員で食事と部屋の後片付けを終えると、帰るにはほどよい時刻となり、最後に来年もよろしくといった趣旨の挨拶を互いに交わして解散となった。 
902:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:00:17.52 ID:kAKMmD4ho
 雪ノ下の見送りは固辞し、四人でマンションのエントランスまで降りてきた。雪はまだ積もってはいないが、夜になっても降り続けていた。 
  
 「ヒッキー、楽しかったね」 
  
 駅に向かい、並んで歩くのは由比ヶ浜。前方には少し離れて葉山と一色がいる。 
903:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:01:52.87 ID:kAKMmD4ho
 長い睫毛に雪がかかる。 
  
 掲げた手には、青い花。 
  
 開かれていた掌が閉じ、きゅっと握られる。 
904:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:02:33.69 ID:kAKMmD4ho
 立ち止まり上下にある無数のポケットをまさぐっていると、一歩前に進んだ由比ヶ浜が振り返る。 
  
 「ん?どしたのヒッキー?」 
  
 「いや……スマホがな、ねぇんだよ。どっか落としたかな、雪ノ下んとこに忘れたのかな」 
905:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:03:21.88 ID:kAKMmD4ho
 今日はあんま触らなかったからなぁ……。買い物の時に落としてたりしたらどうしよう、うわぁ超めんどくせぇ。 
  
 「あ、出た。……もしもし?」 
  
 どうやら人の手にはあるらしい。ただ、まだ行方はわからない。固唾を飲んで次の言葉を待つ。 
906:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 17:04:02.57 ID:kAKMmD4ho
 俺が勝手に忘れたもんだし、取りに行かせて頂きますよ。 
  
 「あ、ヒッキーが今から取りに行くって。……うん、わかったー。バイバーイ」 
  
 「雪ノ下、なんて?」 
958Res/569.11 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
板[3] 1-[1] l20 
	このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
	もう書き込みできません。