過去ログ - 万里花を愛でるニセコイSS「モウドク」
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名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:13:23.71 ID:Hi1Nl0Jz0
「いやー、大漁大漁」
最近始めたばかりの趣味の釣りだったが、思いがけない釣果に一条楽は満足そうな声を上げた。
「しかしこんなところでフグなんて釣れるもんなんだな」
釣った魚を納めたクーラーボックスには、タイやアジなどの魚の他に、大きなフグが三匹ほど収まっていた。
通常フグといえば釣り人からは忌避されることが多いが、楽が釣り上げたのはフグ料理屋などで供される高級魚のトラフグだった。
「小さいクサフグなんかだったら逃がしてやるとこだけど……」
この大きさのトラフグ、買えばいくらになることか。
得意としている料理の腕が鳴る、と言いたいところだったが、しかし素人が猛毒を持つフグを調理するわけにはいかない。
どこかの料亭に持ち込もうかと考えていた時、楽はふとあることを思い出した。
「そういえば、橘のやつ、フグ調理師の免許持ってるって言ってたっけ」
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2
:
名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:14:40.49 ID:Hi1Nl0Jz0
「まあ、立派なトラフグですわね!」
一条家の厨房にドンと置かれたクーラーボックスの中身を見て、橘万里花は両手をパチンと合わせながら嬉しそうな声を上げた
「どうだ、捌けそうか?」
以下略
3
:
名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:15:30.98 ID:Hi1Nl0Jz0
実は釣りをしていた港からの帰り道、楽はケーキバイキング帰りだという桐崎千棘と小野寺小咲に偶然出会い、事の成り行きをすっかり話してしまっていた。
降って湧いたトラフグという高級食材は乙女の胃袋にとっては別腹に入るものに分類されるらしく、いつものメンバーをかき集めてのフグパーティーの開催が即断即決される運びとなった。
「……というわけで、多分10人ぐらい集まるんじゃないかな」
「むー、楽様と二人きり、というわけではないのですか。それは少し残念ですけれど、でも調理の間は楽様と二人の共同作業になるわけですし、よしとしましょう!」
以下略
4
:
名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:16:25.15 ID:Hi1Nl0Jz0
「では楽様はそちらのお野菜を切ってくださいますか?」
「おう。こっちの出汁はどうする?」
「それは少し置いて粗熱をとりましょう。私はこちらのフグを捌いてしまいますので……」
以下略
5
:
名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:17:04.08 ID:Hi1Nl0Jz0
「ダーリンおかわり!」
「だーっ、お前食い過ぎだろ!」
「一条楽、なにやらフグ料理の中にはヒレ酒、というものがあるそうだが……」
以下略
6
:
名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:18:55.95 ID:Hi1Nl0Jz0
どうにか料理を仕上げて提供し終わった楽は、端から端まで平らげられてすっかり空になったテーブルの上の皿を見てほっと安堵の息をもらしていた。
さすがに万里花と二人でこの人数分の料理を仕上げていくのは大変だったけれど、どうやら皆には満足してもらえたようだ。
また今度、魚がいっぱい釣れたらこんな風に皆に振る舞うのも悪くはない。
そんなことを考えかけた時、楽はふと重大なことに気がついた。
以下略
7
:
名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:19:43.42 ID:Hi1Nl0Jz0
「橘、何やってんだ?」
声をかけられて初めて楽に気付いた万里花が振り返る。
「フグの毒のある部位の処分ですわ。飲食店でフグを取り扱う場合、調理後に残された毒がある部位はこうして厳重に保管しておいてから、キチンと決められた手順に従って処分をしないといけないのです」
以下略
8
:
名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:20:48.93 ID:Hi1Nl0Jz0
「あのさ……橘」
「はい、なんでしょう?」
「実はその……作った料理、みんなあいつらが平らげちまったみてえで……俺たちの分、残ってないんだ。ホントにスマン、こんなに一生懸命手伝ってくれたってのに……」
頭を下げる楽をキョトンとした様子で見つめていた万里花だったが、ふと何かに気付いたように、パチンと両手を合わせた。
以下略
9
:
名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:21:32.91 ID:Hi1Nl0Jz0
「橘はホントすげえよな。料理の腕も手際もいいし、こうやってちょっとした気遣いも忘れてねえ。俺も料理や家事は得意なつもりだったけど及びもつかねえよ」
「あら、このぐらいのこと、楽様の許嫁としては当然のことですわ」
お皿に掛けられたラップを外しながら、こともなげに万里花が応える。
以下略
10
:
名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:22:29.30 ID:Hi1Nl0Jz0
興味のあることにしかそのエネルギーが向かないだけで、万里花は実際は頭も要領も非常によい。
そのフグの試験も気合いと努力で乗り切ったのだろう。
実際、最近は学力もメキメキと伸びているのだとか。その理由が自分と同じ大学に行くため、というのだから、楽としては呆れながらも頬を染めずにはいられなかった。
以下略
11
:
名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:23:33.42 ID:Hi1Nl0Jz0
「も、猛毒!?」
南の島で見た、万里花が倒れ臥している姿が楽の脳裏をよぎる。
そんな心配を読み取ってか、万里花はニコリと笑みを浮かべながら言う。
以下略
12
:
名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:24:32.78 ID:Hi1Nl0Jz0
「一度それを知ってしまえば、もう二度と元に戻ることはできません。愛する人のためならば、どんなことだってできる。愛する人のためにこそ、生きる意味がある。胸は焦がれ、その身は震え、その愛を失うようなことになれば、きっと呼吸をすることだってできなくなってしまう……」
少しだけ芝居がかかった様子に照れたのか、くすりと笑う万里花。
「……なんて、そんな風になってしまうものなのですわ。それにフグの毒もそうですけれど、愛にも特効薬はありませんから」
以下略
13
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名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:25:14.57 ID:Hi1Nl0Jz0
「楽様は楽様のペースでよろしいのです」
抱きついたまま、まるで楽の心を見透かしたように万里花が言う。
「私はたまたま、昔に楽様からいろいろなものをいただいて、それからずっと、一人で考え続ける時間が長かっただけですから。楽様もきっと、そのうち愛を知って、その毒が身体中に回る時が来るはずですわ」
以下略
14
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名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:26:38.27 ID:Hi1Nl0Jz0
鍋も、フグ飯も、天ぷらも、その味はまさしく絶品だった。
これは自分たちの分を残さず平らげられても仕方がないと、楽も納得せざるを得ない。
向かいでは幸せそうな表情で、万里花をぱくぱくと料理を口に放り込んでいる。
九州の一部やフグの本場下関では、縁起をかついでフグのことを「ふく」という、と料理をしている最中に万里花が教えてくれたけれど、まさしく食べた人に福を運んでくる幸福の魚に違いなかった。
以下略
15
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名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:27:46.37 ID:Hi1Nl0Jz0
そっけない自分の反応にも本当に嬉しそうに笑う万里花の笑顔を見ていると、頬が火照り、胸がドキドキする。
まるで全身が痺れたようで、呼吸が苦しくなって――。
以下略
16
:
名無しNIPPER
2015/07/02(木) 00:29:56.46 ID:Hi1Nl0Jz0
本誌に合わせてたまにはマリーのターン!
17
:
名無しNIPPER
2015/07/02(木) 18:25:58.73 ID:co+UgDEH0
乙
マリーさんが幸せそうな話を読めてこっちも幸せな気分になれたぜ
18
:
名無しNIPPER
[sage]
2015/07/03(金) 18:14:03.79 ID:SqZ1QeRho
乙 タイトルからしてどっちかが毒に罹ってテンヤワンヤかと思いきや
何事も無く?終わってくれてよかった
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