19: ◆XtcNe7Sqt5l9[saga]
2015/07/15(水) 10:04:26.07 ID:9XTpaLhVo
その日の晩、魔王城までの進路が決まった。
その日から道中の魔物は格段に強さを増していった。
勇者は剣技は勿論のこと、魔法もめきめきと上達していった。
僧侶は回復魔法、補助魔法とみるみるうちに習得していく。
魔法使いは流石、エルフの血族だ……彼女の魔法は魔力のない盗賊からすれば魔王の様に見えた。
では、盗賊はどうだろうか。勿論、彼も成長を重ねていた。
その疾さには磨きが掛かり、最早誰にも追いつける存在ではなかった。
彼の弱点を見抜く力により、魔物は即座に致命を受けざるを得ない。
だが、彼自身に致命を貫く力はなくて、彼は最近では補助に回る事が多かった。
魔物の弱点を見抜き、それを勇者や魔法使いが攻撃……そして、倒し損ねた的を盗賊が刈り取る。
しかし、彼はそれで良かった。パーティでの役割は戦闘にのみ存在するものではない。
彼の使命は勇者一行を円滑に魔王城へと届ける事。その為ならと自らの手を何度も汚し続けていた。
勇者達には成し得ない事。つまり、勇者達へ牙を剥く人間の排除。
それは僧侶は勿論、魔法使いも知らず――勇者だけが、感づいている。
だが勇者は何も言わなかった。盗賊の行いが必要ではあった。だから、やはり、心根で否定するしかできやしない。
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