19:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:49:16.42 ID:d3Zd/SN00
――でも。
監督「君たちはそこに立っているだけでいいから。いいかい? 何も話さず、ただ、立っているだけでいい」
桃子たちに向かって、監督は言った。そのシーンは、主人公一家の娘役である泰葉ちゃんと、その母親、それとそのママ友役の人たちがメインのシーンで、桃子たちはそのママ友役の人たちの子ども、という設定だった。確かに台本を見ると後に緊迫したシーンもあるのだが、そのカットはただの日常風景のシーンだった。そんなシーンで、『立っているだけ』?
それは明らかに不自然だった。もちろん、それを目立たせないような演出にするのだろうけれど、それでも、そうするべきではないということくらいはわかった。絶対に、何かしていた方がいい。桃子たち同士で話したり、遊んでいたり。鬼ごっこでもいい。何かしていることが必要だ。設定から考えても、台本の流れでも、それが合っているはずだ。
だから、桃子は言った。
桃子「それって、変じゃないですか?」
でも、その時の桃子はまだまだだった。名前なんてまったく売れていない子役。注目すらされていない端役だ。監督の目からすれば、それはもう、ほとんど『普通の子ども』と変わらないことだろう。
そんな子どもに自分の演出を否定されて、監督は何を考えるか。
もちろん、それが平常時であれば、その監督が普通の大人の人なら、何も起こりはしなかったのだろう。ただの『子どもの戯言』と片付けて、桃子を適当に丸め込んだことだろう。その場合でも桃子は納得することなんてなかったような気もするけれど、そんな仮定をする意味はない。
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