20:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:49:51.86 ID:d3Zd/SN00
だって、桃子の言葉に、その監督は怒ったのだから。
「子どもが何を言っている」だの「何がわかる」だの「俺の演出にケチを付けるつもりか」など色んなことを言われた。周囲の様子を観察する限り、これはこの監督にとってそれほど珍しいことではないようだった。さすがに桃子は子どもだったから、止めてくれる人も多かったけれど、その中には『呆れ』のような感情が大きく含まれているような気がした。
監督の言葉に桃子は反論したけれど、それでも監督は桃子の言葉を否定したし、周りの人は桃子をたしなめた。あの監督よりも桃子の方が簡単に折れると思ったのだろう。周りの人はとても困っている様子だったし、苛立っている人も居たように思えた。だから、桃子は仕方なく、折れることに――
21:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:51:09.51 ID:d3Zd/SN00
監督「……はぁ?」
監督の声のトーンが明らかに下がった。先程までよりも不機嫌な声。
監督「泰葉ちゃーん。いくら君が天才子役でも、大人には大人の演出ってものがあるんだよ。それに、このくらいでそこまで変わらないって。それとも、君、降ろされたいの? 子役なんて誰でも一緒だし……まだ、一話だし。降板させても、いいんだよ?」
22:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:51:53.16 ID:d3Zd/SN00
でも、そんな心配は必要なかった。
泰葉「……本当に、いいんですか?」
泰葉ちゃんは言った。その声には、なにか、力を感じた。
23:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:52:56.91 ID:d3Zd/SN00
それは、ただの子役が言ったのなら、『生意気』だとしか思えなかっただろう。
実際、その言葉はどれだけ実力があったとしても『生意気』な言葉だった。何様だと思われても仕方ない言葉。
でも、それでも――泰葉ちゃんのその言葉は、『生意気』だなんて思うことすらできない何かがあった。
24:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:53:39.03 ID:d3Zd/SN00
泰葉「周防……桃子ちゃん、だったっけ?」
桃子「ひゃっ」
後ろから声をかけられて、桃子は驚いてしまった。振り返るとそこには泰葉ちゃんが居た。
25:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:54:12.34 ID:d3Zd/SN00
08
桃子「……泰葉、お姉ちゃん」
26:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:55:32.47 ID:d3Zd/SN00
グリP「……岡崎、泰葉?」
プロデューサーはふと思い浮かんだ名前を呟いた。いや、だが、そんなことが? そう言えば彼女は今、アイドルをやっていると聞いた。でも、それがどうした? そもそも、桃子と岡崎泰葉に何の接点が――
グリP(……あっても、おかしくはない、か)
27:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:56:19.31 ID:d3Zd/SN00
09
「おかえりなさい、泰葉さんっ」
28:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:57:20.65 ID:d3Zd/SN00
悠貴さんは私の後輩だ。『芸能人』として、というだけではなく、『アイドル』として、そして『モデル』としても後輩にあたる。同じモデルをやっていたということもあってか、以前仕事を一緒にした時から彼女は私を慕ってくれている。
――慕われる資格なんてあるの?
泰葉「っ!」
29:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:58:16.83 ID:d3Zd/SN00
10
桃子ちゃんとの初対面は衝撃的なものだった。少なくとも、私にとっては。
30:名無しNIPPER[saga]
2015/07/16(木) 15:58:46.69 ID:d3Zd/SN00
それがこの業界なのだ。良い顔をしておいて損はないが、能力さえあればどれほどの悪人でも許される。
もちろん、あまりにも権力を持っている人に嫌われたりすれば干されるし、好かれれば過剰に押されたりはする。そういった関係から能力がないくせに威張っているような人ももちろん居る。
でも、そういった例外を除けば、この業界は実力こそが優先される。『力』があるかどうか。それこそが大事な世界なのだ。
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