57:1[saga]
2015/08/06(木) 03:58:38.11 ID:DprYNBt5O
健夜「――だめだ…」
道端のベンチに座り込む陰鬱な顔。
その目は生気が失われ、負の世界に片足どころか両足どっぷりといった様相だ。
58:1[saga]
2015/08/06(木) 03:59:22.86 ID:DprYNBt5O
咲には団体戦でインターハイを目指してもらう必要がある。個人戦では意味がないのだ。
団体戦となると最低でも五人、本人を勘定にいれると四人、集める必要があった。
ひとりはアテがあった。確定というわけではなかったが、本人は乗り気で、あとは保護者の了解さえ得られたらといった具合だ。話をしに伺った時は溺愛っぷりが目に余るほどだったので、おそらく最終的に本人の意思が優先されるであろう。
59:1[saga]
2015/08/06(木) 04:00:43.18 ID:DprYNBt5O
髪をさらう冷たい風に心まで凍てつきそうになる。
重苦しく感じる胸中をすこしでも慰めようとおおきな溜め息を吐き出した、その時、着信を知らせる機械音が鳴り響く。
突如喚き出した携帯電話によくわからない緊張感を抱きながら、呼び出しに応じる。
60:1[saga]
2015/08/06(木) 04:01:50.08 ID:DprYNBt5O
『こっちも色々調べてみたんだけどさ。なんか、人材発掘といえば、って人がいるっぽいよ』
健夜「…え?ちょ、ちょっと恒子ちゃん、それ詳しく」
61:1[saga]
2015/08/06(木) 04:02:32.23 ID:DprYNBt5O
トシ「どうも、はじめまして。熊倉トシです。お会いできて光栄です、小鍛治プロ」
熊倉女史の第一印象はやさしそうなおばあちゃん、だった。
アポを取った時の声からも滲み出ていたように感じたが、実際に対面してみると改めてそう思う。
62:1[saga]
2015/08/06(木) 04:03:48.52 ID:DprYNBt5O
健夜「あの…率直に言いますと、私いま、ある事情で有望な雀士の子を探しているんです。来年には高校生で、かつ女子であることが条件で。人材発掘といえば熊倉さんだと噂に聞いたもので、厚かましいお願いだと承知の上でご教示賜りたいと…」
トシ「ふむ…」
63:1[saga]
2015/08/06(木) 04:05:07.45 ID:DprYNBt5O
張りつめた空間を跨ぎ、見つめ合うふたりの雀士。
片や指導者になろうという者。方や指導者として名を馳せる者。
果たして、その睨み合いは数秒、数十秒と続き。
64:1[saga]
2015/08/06(木) 04:06:08.13 ID:DprYNBt5O
トシ「南浦聡を知ってるかい?」
健夜「シニアの南浦プロですか?知っていますが…強面ですよね」
65:1[saga]
2015/08/06(木) 04:06:59.94 ID:DprYNBt5O
トシ「南浦には孫がいるのを知ってるかい?」
健夜「いえ、初耳です」
66:1[saga]
2015/08/06(木) 04:07:45.62 ID:DprYNBt5O
再び長野へと舞い戻ってきた健夜はさっそく南浦氏のもとを訪ねていた。
今時和風な畳座敷にて、卓袱台を挟んだ向こうに胡坐をかく南浦聡。
その厳しい目つきと口角の下がりきった口許、総じて無愛想と取れる印象からトシとは正反対の人間であることが見て取れた。
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