55: ◆xedeaV4uNo[saga]
2015/08/24(月) 10:04:54.20 ID:aYmvm1JN0
それでもなんとか上半身を起こすと、鳥海もあたしと同じように倒れてるのが見えた。
気の緩みかけた瞬間。
「う、あ――あ!」
鳥海がいきなり仰向けに体を入れ替えると海面を叩くようにして跳ね起きた。
嘘だろ……まだ立つのか……。
俯き気味で表情は見えないし胸を押さえて咳き込んでいて、今にも倒れてしまいそうなほど膝も震えている。
もう限界なのに、それでも鳥海は確かに立っていた。荒い呼吸と覚束ない足取りでも、崩れそうな体を必死に保って。
支えてるのは意地だ。あいつの前では負けたくないと言った、そのためだけに。
「なら、あたしは……」
もう限界なんだし、このまま寝てていい。
あたしはやるだけやったし鳥海は意地を通した。
そうさ、これで全部が丸く収まる。
収まるのに……どうして、あたしまで起き上がっちゃったんだろうな……。
「寝てて……よかったのに」
「自分でもそう思ってたところだよ……」
笑ったつもりだったけど、そういう顔ができた自信はない。
あれだけ限界だと思ってたのに、立ててしまうと少しだけ動けそうな気がしてきた。
どう転ぼうと全力を尽くさなくちゃいけないし、ほんのちょっぴり全力に足りてなかった。
体というより艤装が動く。
普段なら遅いと感じる速度でさえ、今は振り回されてしまいそう。
動いたのはいいけど体はやっぱり正直だったらしい。
殴りかかるというより腕を伸ばしただけで鳥海の体に飛び込む。というより倒れこんだ。
鳥海も受け止めてくれる。
「……ごめんね」
何を謝るんだよ。謝るとしたらあたしのほうなのに。
……けど、あたしはそこまでは言えなかった。
受け止めてくれた鳥海の温もりに、あたしってやつはすっかり安心してしまったようで。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
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