135: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 01:59:54.97 ID:s8phhYh5O
 まず麗がお手本のラインを鳴らし、二回目のループで三人が併せて歌う。 
  
 軽快なテンポで、ステップを踏むようにフレーズが流れていく。 
  
 右手は軽妙かつ爽快なメロディ、左手はノリよく小刻みに揺れる伴奏。場を包む音は、ラグタイムだ。 
136: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:00:29.73 ID:s8phhYh5O
 中でも卯月は、さすが養成所に通っているだけあって、 
 安定してフレーズを追随出来ており、三人の中では特に良く通る声が出ていた。 
  
 しかし凛と未央の二人は、一般人と何ら変わらない普通の女子高生。 
  
137: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:01:24.27 ID:s8phhYh5O
 「なに、今は上手くやろうと気張る必要はない。リズムに乗って、喉ではなく身体から声を出してみよう。 
  それがとても楽しいことなのだ、と感じてくれればそれでいい。誰しも最初は初心者だ、恥ずかしがらずにな」 
  
 再び麗がピアノを弾く。今度は更に軽快でうきうきするような雰囲気が感じられた。 
  
138: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:01:58.66 ID:s8phhYh5O
 ラグタイムで弾いていたフレーズが、今度はカントリーミュージックの潮流となって麗を動かした。 
  
 その美麗な動きに、凛や未央は勿論のこと、卯月も口を開けて惚けている。 
  
 麗は若干苦笑しつつ、「さあ、みんな一緒にやってみよう」と促す。 
139: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:02:32.10 ID:s8phhYh5O
 リズムに合わせて足踏みを入れたり、腕を振ってみたり。 
  
 身体をひねり回したり、飛び跳ねたり、片足を軸に回転したり。 
  
 そのまま、様々な曲に合わせて、麗は色々な情景を、声で、身体で、表現する。 
140: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:03:06.51 ID:s8phhYh5O
  
 およそ一時間ほど身体を動かし、クールダウンを兼ねてストレッチをしている際のこと。 
  
 ぎこちない柔軟運動をこなす凛に、麗が訊く。 
  
141: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:03:34.05 ID:s8phhYh5O
 「ふむ、そうか」 
  
 麗は顎に手を添えて頷いた。 
  
 そして、その様子を不思議そうに眺め眉根を寄せる凛に気付き、 
142: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:04:12.80 ID:s8phhYh5O
 「芸能人は見られるのが仕事だからな。整った歯並びと云うのは重要なんだ。 
  かと云って、矯正されたそれは、まるで入れ歯のような人工的な印象を与えてしまう。 
  その点、君の“自然な歯並びの良さ”と云うのは大きな武器となろう」 
  
 麗は腕を組んで軽く頷き、「君は恵まれているな、親御さんに感謝するんだぞ」と笑った。 
143: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:04:42.32 ID:s8phhYh5O
 丁度のタイミングで、防音扉が音を立て、社長が顔を出す。 
  
 視認した麗は、凛、卯月、未央を立たせて、レッスンの締めくくりに移った。 
  
 「さて、体験はどうだったかな。勿論今日やったことが全てではないが、多少は空気を感じて貰えたと思う。 
144: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 02:05:09.18 ID:s8phhYh5O
 「正直に云えば、現時点では三人とも平均的な一般人レベルに過ぎません。島村君は多少こなれてはいますがね」 
  
 彼女も同じように、更衣室へ向いたまま答える。 
  
 「はっはっは、相変わらず厳しいねえ、麗は。――他の二人はどうだい?」 
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