337: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:41:44.94 ID:s8phhYh5O
彼は現場を混乱させる可能性を危惧して、レッスンの内容に口を出すことはしなかった。
毎度、邪魔をしないよう隣から見守るのだ、凛はおろか明や慶までPの存在を認識していないかも知れない。
もちろんトレーニングの様子はしっかり見ているし、それを受けてプロデュース方針にこまめに手を入れている。
338: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:42:43.66 ID:s8phhYh5O
「P殿。老婆心から云うが……過干渉も、そして“不干渉”も好ましくないぞ」
「えっ?」
Pは驚いて一歩後退さる。
339: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:43:16.85 ID:s8phhYh5O
あくまで技術のレベルアップを要望しただけで、リズム感を鍛えてくれ、とは云っていない。
つまり、トレーナー陣はPの要求に忠実に動いているわけだ。
Pは、自分が云わずとも、凛の踊りの質を上げる為に、明たちが裁量でやってくれるだろうと思い込んでいた。
340: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:43:44.87 ID:s8phhYh5O
「まあこれは、妹たちからP殿に提案・進言する姿勢が欠如しているとも云える。あとできつく絞っておこう」
麗がメモを取ろうとする様子を、慌ててPが制止する。
「待ってください、おそらくその原因には心当たりがあります。彼女たちを責めないでください」
341: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:44:15.39 ID:s8phhYh5O
「慶ちゃん、真面目でいい子ですよね。勿論、明さんも」
スタジオ内を見やって、Pは自らの落ち度にやれやれと首を竦めた。
「凛の本番が一週間後に近づいているんですが……今から指導内容を変更して大丈夫でしょうか」
342: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:44:45.54 ID:s8phhYh5O
「だが貴方はそれが課題だと認識できているのだろう? 原因が判っているなら改善のために動くのは簡単だ」
Pの思考を見透かしたようなタイミングで麗が言葉を続けた。
訝しむPへ、麗は腕を組んで笑う。
343: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:45:44.77 ID:s8phhYh5O
「そう。スタジオレッスンとはまた別の機会で、P殿によるリズムトレーニングを追加するんだ」
「だって自分はトレーナーではありませんよ!?」
「何を云う。プロデューサーはアイドルを導く存在。多少のレッスン指導はするものだ」
344: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:46:13.16 ID:s8phhYh5O
「P殿は……少なくとも渋谷君よりも、リズムの感覚は鍛えられている。それはさっきの仕種だけですぐ判る」
ダンスミュージックに乗って、自然と身体が動いていた件だ。
「私見だが……貴方は音楽に関して何らかの経験が既にあるんじゃないかな?」
345: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:46:48.34 ID:s8phhYh5O
「種明かしは簡単さ。訓練を受けてない人間が、裏拍でリズムを取ることはまずないよ。特に日本人はね」
箏曲や囃子など、西洋の文化がもたらされる前の伝統音楽に思いを馳せれば、表拍子を刻むものが大多数だ。
さらに元を辿ってゆけば、唄による感情表現が最優先となり、一定の律動を刻むという習慣さえなかった。
346: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 04:47:17.46 ID:s8phhYh5O
「西洋式の拍の取り方を知っているなら――即ち訓練されたことがあるなら、それを彼女へP殿から伝えるんだ」
Pは麗の目をしっかり視て、一度だけ、強く首を縦に振った。
「……わかりました。すぐにでも準備します」
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