382: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:27:48.26 ID:s8phhYh5O
結局そのまま、ここが彼女らの指定席。
最後まで、近くて遠いステージを見詰めていた。
「こないだ屋上で聞いた時は、根は真面目なアイツがアイドルなんて性質の悪い冗談かと思ったけどさ」
383: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:28:19.31 ID:s8phhYh5O
演り終えた凛が、新たに獲得したファンとフロアの端で記念撮影をしているのを遠目に、二人は感慨深気だ。
「これは、自慢話が捗るわね」
あづさが期待に胸膨らませると、
384: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:28:47.97 ID:s8phhYh5O
「正直、これまで何に対しても“なあなあ”で済ませてきた凛がここまで打ち込んでるなら、近く大物になるわ」
「かもな。原石って、思いもしねえほどあたしの近くに転がってたんだなぁ」
「あわよくばわたしたちも?」
385: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:29:21.22 ID:s8phhYh5O
撮影を終えた凛が、Pを伴ってやって来た。
「二人とも、来てくれたんだ」
「ええ、そりゃ貰ったチケットを無駄にするわけにはいかないもの」
386: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:29:55.77 ID:s8phhYh5O
「ああ。なんか気恥ずかしいけどよ、カッコよかった。お前のファンになったぜ」
「わたしもよ。そこそこ長い付き合いだと思ってるけど、初めて凛に燃えさせられた。れっきとしたファンね」
「そこまで云ってくれると光栄だね。君たちは凛のファン第二号と第三号だよ」
387: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:30:33.37 ID:s8phhYh5O
帰路に就く友人らと別れ、凛とPは飯田橋の街を事務所まで歩く。
凛は表向き無感情な顔をしていたが、その内心は昂りを禁じ得なかった。
388: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:30:59.78 ID:s8phhYh5O
凛は、かつて経験したことのない未知の充足感に包まれている。
ついこの間までただの一般人だった不器用な女の子。
そんな凛が自分とは無関係だと思っていた場所へ、境界の向こう側へ足を踏み入れた実感。
389: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:31:34.48 ID:s8phhYh5O
いや、正確には、知らない“フリ”をして、直視しようとしなかっただけかも知れない。
「あの刻、渋谷で“不審者”に声を掛けられなかったら――きっと耳を塞いで回れ右していたんだと思う」
在りし日に思いを馳せる。社長とPにスカウトされた日を、昨日のことのように記憶している。
390: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:32:04.59 ID:s8phhYh5O
凛の注意虚しく、事務所へ続く階段にPはつま先をぶつけた。
「あーあ、云わんこっちゃない」
足を押さえてうずくまるPへ呆れて語り、それを横目で見ながら凛は軽やかに駆け上る。
391: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:32:30.65 ID:s8phhYh5O
そこには、CGプロの全員が集合していた。
「凛。本格デビュー、おめでとう」
凛に遅れること少々、立て付けの悪い扉を閉めたPが云うと同時に、それぞれが手にしたクラッカーを鳴らす。
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