386: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:29:55.77 ID:s8phhYh5O
「ああ。なんか気恥ずかしいけどよ、カッコよかった。お前のファンになったぜ」
「わたしもよ。そこそこ長い付き合いだと思ってるけど、初めて凛に燃えさせられた。れっきとしたファンね」
「そこまで云ってくれると光栄だね。君たちは凛のファン第二号と第三号だよ」
387: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:30:33.37 ID:s8phhYh5O
帰路に就く友人らと別れ、凛とPは飯田橋の街を事務所まで歩く。
凛は表向き無感情な顔をしていたが、その内心は昂りを禁じ得なかった。
388: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:30:59.78 ID:s8phhYh5O
凛は、かつて経験したことのない未知の充足感に包まれている。
ついこの間までただの一般人だった不器用な女の子。
そんな凛が自分とは無関係だと思っていた場所へ、境界の向こう側へ足を踏み入れた実感。
389: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:31:34.48 ID:s8phhYh5O
いや、正確には、知らない“フリ”をして、直視しようとしなかっただけかも知れない。
「あの刻、渋谷で“不審者”に声を掛けられなかったら――きっと耳を塞いで回れ右していたんだと思う」
在りし日に思いを馳せる。社長とPにスカウトされた日を、昨日のことのように記憶している。
390: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:32:04.59 ID:s8phhYh5O
凛の注意虚しく、事務所へ続く階段にPはつま先をぶつけた。
「あーあ、云わんこっちゃない」
足を押さえてうずくまるPへ呆れて語り、それを横目で見ながら凛は軽やかに駆け上る。
391: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:32:30.65 ID:s8phhYh5O
そこには、CGプロの全員が集合していた。
「凛。本格デビュー、おめでとう」
凛に遅れること少々、立て付けの悪い扉を閉めたPが云うと同時に、それぞれが手にしたクラッカーを鳴らす。
392: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:34:10.50 ID:s8phhYh5O
・・・・・・・・・・・・
393: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:35:08.59 ID:s8phhYh5O
ノウハウを共有したことで卯月や未央も凛同様にステージデビューし、めきめき力をつけている。
三人は、抜きつ抜かれつ、追い付け追い越せと切磋琢磨し合っていた。
CGプロも、『金食い虫』だった凛が金を少しずつ稼ぐ存在に変わってきたことで、
394: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:35:40.61 ID:s8phhYh5O
そんな夏本番が迫った日、銅が地方の営業先で行なった紹介が、ローカル局から本局へつながった。
ライブの評判を聞きつけたフジツボテレビの担当者が、ライブフェスティバルへの参加を打診してきたのだ。
なんでも、八月末に臨海副都心で二日間開催されるサマーライブフェスに大幅な欠員が生じてしまったらしい。
395: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 05:36:14.99 ID:s8phhYh5O
欠員は先方の都合とはいえ、CGプロは立場が弱いし、主催のフジツボにとってはただの補充に過ぎない。
ゆえにフェスのタイムスケジュールや、複数ある会場の割当は全て向こうに任せるという交渉結果となった。
しかし、好き嫌いを云っていられないし、何よりも担当者が非常に喜び、CGプロへの好感触を得た。
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