756: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:43:01.92 ID:3+pD+bLQo
 じきに、卯月が大慌てで楽屋へ入ってきた。 
  
 「遅くなっちゃってごめんなさ〜〜い!」 
  
 肩で息をしながら、目をぎゅっと瞑って手を合わせる。 
757: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:43:29.23 ID:3+pD+bLQo
 乱れた髪をセットしなおし、噴き出す汗に苦戦しながらなんとかメイクを整える。 
  
 「卯月、ダッシュでこっちへ向かってきたんだろうけど……それでステージ大丈夫?」 
  
 凛が覗き込むように問うと、未だ呼吸の落ち着かない卯月は「う、うん……がんばるね」と力なく苦笑した。 
758: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:44:01.84 ID:3+pD+bLQo
 Pはギリギリまで調整役として事務局と行ったり来たりしているし、 
 未央は転ばぬ先の備えとしてステージ脇で既に待機を済ませている。 
  
 いま、卯月の様子をチェックできるのは凛しかいない。 
  
759: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:44:40.89 ID:3+pD+bLQo
  
 ニュージェネレーションと、未央、凛、卯月のソロがステージを終え、拍手と歓声が沸き起こる。 
  
 凛が卯月のサポートへ入って、ニュージェネのユニットとしての舞台はなんとかこなすことができた。 
  
760: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:45:08.72 ID:3+pD+bLQo
 ステージを終えた時の歓声を、Pは聞いていなかったのだろうか? 
  
 凛がそう疑問を内心で浮かべると、Pは嘆息した。 
  
 「俺の予測値が高過ぎたと云うこともあるかも知れん。 
761: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:45:56.01 ID:3+pD+bLQo
 ユニットの時は卯月を支えようと前面へ出て引っ張った。だが、その陰で卯月の存在感は薄れた。 
  
 逆にユニットを引っ張ろうとして、バネの瞬発力を使い切ってしまったから、凛 
 のソロのステージでは、いつもより少しだけ声の通りやダンスのキレが鈍かった。 
  
762: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:46:28.43 ID:3+pD+bLQo
 「その人に対して、凛は胸を張れるものを出せただろうか? 俺はそうは思わない」 
  
 ――お前は今日、一期一会の意識を忘れていた。 
  
 Pは、言葉を濁さずにはっきりと断言した。 
763: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:46:58.11 ID:3+pD+bLQo
 Pは軽く、もう一回嘆息した。 
  
 「それは卯月ちゃんに頼まれたか?」 
  
 「――ッ!」 
764: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:48:26.16 ID:3+pD+bLQo
  
 フェス二日目。 
  
 昨日の雲は太平洋高気圧に押し出され、打って変わって快晴だ。 
  
765: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:48:57.07 ID:3+pD+bLQo
 凛が卯月を振り向く。 
  
 口を真一文字に引き、上下の唇を圧着してグロスを馴染ませている仕種は変顔となり、少しだけ面白い。 
  
 「卯月、今日はもう大丈夫そうだね」 
766: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 21:49:29.87 ID:3+pD+bLQo
 Pに映像を見せられて、ステージで演っていた自分では気付かないほど、卯月の影が薄くなっていたと判った。 
  
 卯月だって、もっと笑顔を振りまきたかっただろうに。 
  
 凛がどう云おうか迷っている間に、ニュージェネレーションへ、ステージ脇の待機へつくよう要請が降りた。 
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