828: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:25:56.24 ID:3+pD+bLQo
カフェテラスで数人のアイドルと一緒になったとき、第二課の気の小さめな子が、
凛に「もしかして、いじめられてるの……?」と心配そうに訊いてきたこともあった。
「あの人は私をいじめるためにしごいてるんじゃないよ。そもそも私がお願いしたことだしね」
829: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:26:27.35 ID:3+pD+bLQo
日高舞と云う、とても巨大な存在と比較され続けた麗。
舞の強大な背中を常に意識させられる中で走り抜けてきた彼女の“遺伝子”を、凛は受け継がむとしていた。
「あの人が孤独で引っ張ってきた世界に比べれば、私はまだまだぬるま湯の中。もっともっと吸収しなきゃ」
830: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:26:54.99 ID:3+pD+bLQo
麗の特訓は、体力ばかりの話ではない。
むしろ体力作りは基本中の基本だから、それは毎日やっておけと云うのが麗のスタンスだった。
831: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:27:23.25 ID:3+pD+bLQo
しかし、厳しい麗をして一目置くことがあった。
振付けを動かす上での重要なポイントを教わる際、麗の云うことを理解するために高度な専門知識を要求される。
彼女の特訓は、身体を動かすばかりではなく、座学も重要なのだ。
832: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:27:52.00 ID:3+pD+bLQo
凛は、以前Pから云われたことを麗に伝えた。
『構造を理解することが第一歩』である、と。
凛はあれ以来、暇を見つけては音楽理論や音響工学、人体解剖学など幅広い知識を頭に入れるよう心掛けていた。
833: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:28:25.33 ID:3+pD+bLQo
「……しかし、P殿もおよそ十年越しに、憧れのアイドルだった人間と食事に行くとは、
当時の彼には予想もつかないことだろうな」
麗の中で、Pを食事に誘うことはほぼ固まっているらしい。
834: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:28:52.05 ID:3+pD+bLQo
以降の特訓は、Pが忙しい合間を縫って可能な限り同席するようになった。
なんでも、麗がPに直接要請したらしい。
835: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:29:20.25 ID:3+pD+bLQo
「俺なんかが麗さんの特訓で教鞭を執っていいんですかね……」
「P殿はもっと私に対しても自信を持つべきだ。渋谷の特訓のために、渋谷を導くためにP殿は必要だよ」
なにより私もP殿に教えてほしいのだ、との言葉に、Pは泣きそうになっていた。
836: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:29:48.56 ID:3+pD+bLQo
その後の特訓は、CGプロを象徴する構図だったと云える。
Pは、麗に熱狂させられた側の人間として。
麗は、そのステージを創り上げた本人として。
837: ◆SHIBURINzgLf[saga]
2015/08/10(月) 23:30:17.90 ID:3+pD+bLQo
壁面鏡と向かい合い、自らの動きのチェックに余念がない凛を見て、麗がPに訥々と話し掛ける。
「P殿。渋谷なら、あの子なら、もしかしたら……」
腕を組んで、慈悲深い視線を、踊る偶像に送る。
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