過去ログ - 響「今ここにいる奇跡に」
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3:乾杯 ◆ziwzYr641k[saga]
2015/08/11(火) 22:06:55.32 ID:wqQE0kJT0
 19××年。某国の株価の大幅下落を発端に壊滅的な打撃を蒙った世界経済。
 買い手がつかず山となった不良在庫。債務不履行を恐れて銀行が資本の抱え込みに走る。
 滞る企業への融資。連鎖的に倒産していく商社。街に溢れ返った失業者。高まる国民の不満。
 財政の復旧に努めようと苦心惨憺する政治家たち、資本家たち。打ち出される急場しのぎの施策。
 代償として切り捨てられていくもの。その筆頭――外交政策。

 先進各国――国民の不満を国外へ転嫁しようと画策。
 失業者対策として手頃な敵対国を欲する、有り余った物資を加速度的に消費するため。
 なされた挑発的行為の数々――輸出入の差し止め、融資の差し戻し。
 加速度的にきな臭くなっていく国際情勢。もはや戦争は避けられないといった空気が漂い始める。

 そして――すべてを覆す分岐点へ。

 ある時期を境に、太平洋を航行する貨物船舶、旅客船、遠洋漁船の沈没が相次いで報告される。
 敵対国の暗躍を疑い、先進諸国から調査と銘打って派遣された駆逐艦、軽巡洋艦。そのことごとくが沈められる。
 異変が人ならざる存在によってもたらされたのだと気づくまでに、さほど時間はかからなかった。
 救命ボートで運よく近くの島に流れ着いた船員、軍人たちの証言。
 感情的、虚無的。支離滅裂のようでいながら一致する証言。


『見たこともない化け物が襲ってきた。海に投げ出された全員、あいつらに食われちまった』


 各国の重鎮たちの思考。何も戦う相手が人間である必要はない。
 対外影響力の大幅増進を目論み、化け物の討伐軍が編成される。
 当時としては最高峰の電波探信儀(以下電探)、砲撃兵器を艦載した軍船。
 その乗組員。大国の師団に属し、あるいは渡り合った歴戦の兵士たち。
 幕僚たちの激励を受け、海へ送り出される大艦隊の威容。水平線に収まり切らぬほど。見送る人々の大歓声、化け物たちの駆逐を確信。

 その数週間後、軍務大臣の執務机に山と積み上げられた書類――敗戦報告書。
 被害規模、遺族補償、傷病者手当ての試算、桁違いの数字、卒倒の大敗北を喫する。


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