24: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:46:44.85 ID:9XUzSbFIo
  
  モモは言葉を失った。 
  静かになったので鳥たちの声がよく聞こえた。 
  
 「……カラスが飛んでるねえ」 
25: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:47:11.68 ID:9XUzSbFIo
  
  驚いて視線を下ろすと、猫が立ち上がったところだった。 
  ふわあと大きなあくびを一つ。彼女はこちらに背を向けた。 
  
 「まあカラスはあんたなんか相手にしないだろうし、あとわたしの気が向いた時だけね」 
26: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:47:38.57 ID:9XUzSbFIo
  
  ところでモモはなんだか変だなあとは思っていた。 
  違和感があって、それが何なのか今まではわかっていなかったのだけれど、ある日ふいに気づいた。 
  
 「猫さん、太った?」 
27: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:48:08.91 ID:9XUzSbFIo
  
  しばらくもったいぶった後、猫は得意げに口を開いた。 
  
 「わたしね、ママになるの」 
 「ママ?」 
28: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:48:40.59 ID:9XUzSbFIo
  
 「それよりママになるって大変じゃないの?」 
  
  モモの言葉に猫はにやりと笑った。 
  
29: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:49:07.56 ID:9XUzSbFIo
  
 「ん? なにか変なこと聞いた?」 
  
  モモは首を振った。 
  
30: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:49:39.53 ID:9XUzSbFIo
  
 「ぼくね、体だけじゃなくて頭も弱いみたいなんだ」 
 「うん?」 
 「ぼくの仲間は人の言葉をしゃべることができる。でもぼくはできない」 
  
31: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:50:26.31 ID:9XUzSbFIo
  
  小鳥のおもちゃをくちばしの先でいじりながらモモは言った。 
  
 「でもそれで苦労したことはないよ。案外うまくやっていける。猫さんとの会話にも困らないし心配しないで」 
 「別に心配してないよ」 
32: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:51:07.86 ID:9XUzSbFIo
  
 「なら慰める必要もないんだね。それは安心した」 
 「ちょっとは慰めてよ」 
 「どっちよ」 
 「あ、でも同情はしないで」 
33: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:51:52.62 ID:9XUzSbFIo
  
  子供の世話は忙しかったようだ。 
  モモが網戸の前にいても半月ほどは姿を現さなかった。 
  
 「疲れた……」 
34: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/08/14(金) 16:53:16.73 ID:9XUzSbFIo
  
 「……でもかわいいんだあ」 
  
  ぐちぐちと苦労話を続けた後、猫が顔をほころばせた。 
  
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