過去ログ - 卯月「プロデューサーさんの、本当の幸せを」
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16: ◆8g8ZKJa8Ps[saga]
2015/08/24(月) 01:47:15.76 ID:20TbIrfu0
響子
「おはようございます! ……あれ、Pさんしかいないんですか? ちひろさんは?

 はあ、シャワールーム? どうしてですか? ……え、お昼のカップラーメン頭からかぶっちゃったんですか!? や、火傷とか大丈夫ですか? ……そうですか、よかったあ。

 ……あれ、じゃあもしかして、雑誌の取材までPさんと二人っきり……?

 え? な、なんでもありませんよPさん! それにしてもスケジュールボードびっちりですね!」

(……あ、スケジュール確認したら、やっぱり事務所に二人っきりだ……これって、あの噂を確かめるチャンス? 早めに来てよかった。よし、まずはお茶を淹れて、プロデューサーさんとおしゃべりできるきっかけを作らないと!)

 私はデスクワークに没頭しているプロデューサーさんを横目に、ロッカーへ荷物をしまうと給湯室へ向かいました。廊下を通り、給湯室の入り口まで来てふと足を止めます。

 おかしな臭いがしました。鼻につくかすかな異臭。私は直感でゴミ箱を開けました。固く口を縛られた黒いビニール袋が入っています。破いてみると、くしゃくしゃになったティッシュと、しなびた風船みたいなものが出てきました。使用済みのコンドームです。

 私はなにかの間違いだと思って、思いたくて、信じたくて、ゴミ箱をあさり続けました。でも、ありません。事務所内の生ごみやにおいの出るゴミは、すべて給湯室に捨てる決まりになっています。

 ですから、ちひろさんが本当にお昼のカップラーメンをこぼしてしまったのなら、少なくとも、ここにはそのゴミがなければなりません。ですが、そんなゴミはどこにも見当たりませんでした。

 足が震えているのが自分でもわかります。床に散らばったゴミを拾う指が、上手く動いてくれません。私はゴミをすべて元に戻すと、給湯室を見回しました。いつもより、いつもより、ずっと綺麗に掃除されています。隅っこにも埃一つ落ちていません。きっとここでなにかあって、丁寧に掃除をする必要があったんでしょう。……ええ、そうですよね。事務所でえっちしたなんてばれたら、ただじゃすみませんしね。

 けれど詰めが甘すぎます。どうしてもっとうまくごまかしてくれないんでしょうか。臭いだって消えてないし、コンドームは捨てっぱなしだし、嘘だってペラッペラじゃないですか。上手に騙してくださいよ。騙しきれてないじゃないですか。私の気持ちには全然気づいてくれないくせに。応えてくれないくせに。どうしてちひろさんとヤってるんですか? そんなに年上がいいんですか? 私じゃだめなんですか?

 ぐるぐるぐるぐると頭の中で言葉が回ります。心がどんどん重くなって、心臓が潰れてしまいそうなくらい胸が痛くなりました。私は手を洗ってから給湯室を出ました。

 プロデューサーさんは相変わらずパソコンのキーボードを叩き続けています。私は後ろからプロデューサーの頭を抱え込むように抱きついて、デスクのペン立てに差してあったハサミを素早く抜き取りました。その冷たい刃先を、ゾクゾクするくらい色っぽいプロデューサーさんの首筋に、ぴたりと押し当てます。


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