24:名無しNIPPER[sage saga]
2015/09/07(月) 00:29:24.31 ID:rVNZ4GiQo
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2月14日。 バレンタインデーの日曜日。
私が自宅の門を開けると、櫻子は既に玄関前に出てきてくれていた。「よっ」とだけ言って寒そうに手をすり合わせる姿はまったく飾らないいつも通りの雰囲気で、私が眠れないほどに気にかかっていた昨日の駅前広場でのムードが嘘のようであった。
着ている上着は、昨日と同じコートであったが。
「そのコートかわいいですわね。似合ってますわ」
「何言ってんの、ねーちゃんが昔着てたやつだよ。ただのおさがりだって」
「でも似合ってますわよ。ちょっとかっこいい」
私から褒められることに未だに慣れていないらしい櫻子はちょっとそっぽを向くと、くるりと回って不思議そうに言った。
「そういう向日葵は何? こんな寒さにしちゃ薄着だけど……そんなんで大丈夫なの?」
「ええまあとりあえずは……最初に行くところ、暖かいので」
「ほーう。どこ行くの?」
私はにじみ出る気恥ずかしさをなんとか抑えて、ちょうど今出てきたところの門を手で大きく押し開けた。
「さあ、入って」
「え……この家に?」
「最初のスポットはここですわ」
「なにそれ! どっか行くんじゃないの!?」
「行きますけど……それはもう少し後で。一番最初はここと決めてましたの」
なんじゃそりゃ……という顔をしている櫻子の背中を押して家にあがらせる。
思っていたよりも櫻子は平然そうで、一安心できると私も元気が湧いてきた。昨日からずっと今日のことが心配だったのだ。
「『どこか行って来れば?』って花子は言ってたのにさぁ」
「何言ってるんですの、あなたもう一年近く私の家に来てなかったでしょう? ここだって立派な場所ですわ」
「あ……」
「櫻子おねえちゃん、いらっしゃいなの!」
「楓……ともついこの前会ったのにな」
「まあまあ、中へどうぞなの♪」
「すぐに温かいものを淹れてきますわね」
背中を押す係を楓に任せ、私は用意しておいた紅茶を淹れにキッチンへ向かった。
これはいわゆるおうちデートと言うのだろうか……何か違う気もするけど、櫻子と一番ゆっくり話ができるのがこの家なのだから仕方ない。
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