1: ◆u6cuCBJb9.[sage saga]
2015/09/19(土) 15:22:50.63 ID:Xmn6YKTJ0
濃緑色に塗られた胴を白い布巾で磨くとそれは重厚感のある鈍い光沢を放った。
瑞雲。空戦も急降下爆撃も可能とした万能型飛行機。多くの戦場で空を舞ってきた私の相棒。
瑞雲――お前には何度も助けられたな。私が提督の艦隊にもたらす戦果はお前があってこそだと思う。感謝している。
時に瑞雲、知っているか? 艦娘である私がお前にこうやって語りかけている様に人もまた犬や猫といったペットに他愛ない話をするそうだ。
不思議なものだよ。犬も猫も……そしてお前も私たち艦娘と違い人と同じ言葉を扱うわけではない。
ましてやお前は犬とも猫とも違う物言わぬ艦載機だ。なのに、こうして語りかけてしまう。よくよく考えればおかしいものだ。会話が成り立たないのだからな。
だが、私には何となくわかる気がするんだ。私の話をただただ聞いてくれる存在。それはとても貴重であり癒しでもあるのだと。きっとペットに話をする飼い主もそうなのだろう。
…………ん? ペット扱いは嫌いか。まあ、そうなるな。すまない。以前、提督から私がお前を拭いている時はとても優しい顔をしていると言われたのを思い出してね。なに言葉の綾のようなものだ、気にするな。
なだめるように無骨な鋼の装甲を拭けば瑞雲は輝きを放って応える。どうやら機嫌を直してくれたみたいだな。
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2: ◆u6cuCBJb9.[sage saga]
2015/09/19(土) 15:26:06.06 ID:Xmn6YKTJ0
瑞雲……早くお前も次の戦場で大空を舞いたいのか?
焦るなあせるな。お前の活躍する機会はすぐにでもやって来るさ。
3: ◆u6cuCBJb9.[sage saga]
2015/09/19(土) 15:30:26.62 ID:Xmn6YKTJ0
そうだ……いつだったか私が大破した時があっただろう。
幸いお前の活躍もあって戦場で命を散らすことはなかったが黒煙を噴く艤装を背に帰還した時、私はどこかで死を覚悟していたのさ。
4:名無しNIPPER[sage]
2015/09/19(土) 15:34:14.35 ID:YcvRU0vao
艦これってスレタイに入れろよ
5: ◆u6cuCBJb9.[sage saga]
2015/09/19(土) 15:34:54.54 ID:Xmn6YKTJ0
………………………………だがな、瑞雲。
提督は自分の命を省みない程に私の事を救おうとした、ということだ。
6: ◆u6cuCBJb9.[sage saga]
2015/09/19(土) 15:41:06.59 ID:Xmn6YKTJ0
だが酔狂さという意味では私よりも提督の方がずっと上だ。それは断言できるぞ。
どうしてか、だと? そうか……お前は知らないのだ。いいさ、お前には特別に明かしてやろう。
7: ◆u6cuCBJb9.[sage saga]
2015/09/19(土) 15:46:19.41 ID:Xmn6YKTJ0
少し夜風にでも当たろう。
外に出ると冷たい風が心地よかった。よく晴れている。見上げた先には煌々と輝く月があった。こんな夜に瑞雲を飛ばしたらさぞ気分がいいのだろう。
8: ◆u6cuCBJb9.[sage saga]
2015/09/19(土) 15:53:12.79 ID:Xmn6YKTJ0
提督はぐっすりと安らかな寝顔を見ていて、私の心は一瞬、不安に駆られてしまった。なんだか提督が死んでしまっているような気がしてな。
そっと頬に触れてみた。温かい。血が通っている。生きている。それがこの触れた手で理解できた途端、心の中の陰りは消えていった。
9: ◆u6cuCBJb9.[sage saga]
2015/09/19(土) 15:54:17.59 ID:Xmn6YKTJ0
行ってきます
帰ってきたらHTML依頼しときます
10:名無しNIPPER[sage]
2015/09/19(土) 17:59:27.01 ID:vs7XLOQOO
素晴らしい
11:名無しNIPPER[sage]
2015/09/22(火) 02:07:37.01 ID:tPIYd5Kmo
乙
12:名無しNIPPER[sage]
2015/09/22(火) 08:27:10.80 ID:EO7j993o0
瑞雲 それは
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