過去ログ - Steins;Gate「二律背反のライデマイスター」
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12: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/09/27(日) 16:39:59.13 ID:jH77HIQDo
「世界線の大きなズレ……俺たちにも予想はできない。しかしいかなる結果が待とうとも、少なくとも何もしないよりはずっとマシだ。……何もできず、都合のいい世界に逃げこむことだけは……もうしたくない」

 俺は何度もループした2日間を、頭の中で思い浮かべた。
 いつの間にか世界から色が失われていく感覚。自分の中でいくつもの声が聴こえる感覚。自分が自分じゃなくなる感覚。
 トラックに轢かれそうになるダルを見殺しにしてしまおうかと考えたのは何度目のループだったか。
 鈴羽に欲情し、内なる自分の声に唆されて親友の娘を傷つけそうになったのは何度目のループだったか。
 世界にとっては昨日のことなのに、随分前の事のように思える。
 そんな歪んだ楽園を思い出していると──

「そうよ……」

 ふいに背中を向けた紅莉栖がぼそりと言った。呟いて勢い良く振り向き、そのまま一気に続けた。

「私だってそうよ! 何もしないままあんたたちを行かせて! それこそ失敗しましたって報告を受けるのなんて、まっぴらごめんだから!」

 珍しく感情をむき出しにしている。いつも冷静な彼女にしては珍しい。

「悔しいのよ……まゆりを見殺しにして、あんたの……岡部のいない世界で私はSERNでタイムマシン研究に携わって……。ディストピアの構築に貢献したまま、結局何も出来ないまま──」

 少しだけ間が空いて、胸が締め付けられるような弱々しい声に変わった。

「何より……あんたたちの力になれずに2人を行かせてしまうこと、それが悔しいの……」

 最後は絞りだすような声だった。涙を浮かべてはいないが、今にも崩れ去ってしまいそうな危うさを感じさせた。

「紅莉栖……」

 俺が声をかけると紅莉栖は再び俯いてしまった。顔を下に向けたまま、俺に間を埋めさせまいと立て続けにまくし立てる。

「ハッ! 何が天才よ、何がタイムマシンの母よ、聞いて呆れるわ。大切な人のために頑張ってる仲間の力になれないどころか、敵対する組織に肩入れするなんて」

 嘲笑うような自虐的な態度。

「ほんっと……呆れる……」


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