過去ログ - Steins;Gate「二律背反のライデマイスター」
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233: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:05:41.61 ID:0whGTSNro



 数日後、鈴羽や大学の事務に、研究のためイギリスへ発つと伝え、諸手続きを済ませて俺は新東京国際空港から日本を後にした。およそ半日のフライトを終え、俺はロンドンの地へと降り立っていた。
 ヒースロー空港を出るとすぐに強風の横風が浴びせられる。
以下略



234: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:09:30.76 ID:0whGTSNro

 タクシーを降りてしばらく紅莉栖の後ろを歩いていると、すぐに茶色を基調とした歴史を感じさせる建物が俺の目に映った。白い格子窓がいくつもつけられており、屋根の中央には青銅の時計台がそびえ立っていた。海外の小学校を思わせるような形貌である。
 中に入ろうとすると白衣を着用した大柄な白人男性が看護婦と話している様子が目に入った。

「あ、ちょうどよかった。あの彼が今回あんたを見てくれる先生よ」
以下略



235: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:13:19.42 ID:0whGTSNro
「ああ、イギリスに駐在してはいるけれど、生まれはイタリアらしいから。生粋のHENTAIよ。今も口説かれてたんじゃない? 彼女」

 そう言って紅莉栖は玄関の少し奥に佇む看護婦を見る。彼女はこちらを恨めしそうに見つめていた。

「な、なるほど……。イタリアンの変態紳士か……」
以下略



236: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:15:24.64 ID:0whGTSNro
 どっと疲れが出てきたのは恐らく長時間のフライトだけではあるまい。まったく厄介な人物と引き会わせてくれたものだ。
 しばらく廊下を歩いているとふいに2人が室内へと入った。それにつられて俺も部屋へとくぐる。

「ここよ」

以下略



237: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:17:42.82 ID:0whGTSNro
 変なこと──それはタイムトラベルについて。だ
 いくら記憶を失っているからといって、患者からタイムトラベルした、などというワードが出てきたら不思議に思わざるを得ないだろう。
 それがもし、万が一SERNにでも伝われば──
 俺たちの計画は台無しになる。それを懸念してのことだ。
 催眠状態に陥ったとしても意識が無くなるわけではないから話すべき内容は自分の意思で選択できる、と紅莉栖は言っていたが、それでも不安は隠し切れないでいた。
以下略



238: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:20:28.51 ID:0whGTSNro
「はい、集中して。無駄口叩いてると催眠状態に移行できないわよ」

 紅莉栖に窘められ、俺は仕方なく指示に従う。
 ゆったりとした、人を落ち着かせるような口調の声が病室内に静かに響いている。
 はじめは外の雑音──車の音や人の会話、鳥の鳴き声も耳に入ってきて気になっていたが、やがてそれらは綺麗さっぱり消え、ついには紅莉栖の声だけが俺の脳内に鳴り響くようになった。
以下略



239: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:22:31.83 ID:0whGTSNro
──覚えていないの?

「…………ああ」

──じゃあ、鈴羽が帰った後のこと思い出して。
以下略



240: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:23:52.67 ID:0whGTSNro

──落ち着いて!

 銃を構え──

以下略



241: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:25:56.23 ID:0whGTSNro

 気がつけば紅莉栖が俺の体を揺さぶり、催眠状態から抜け出すための処置をしてくれていた。
 俺は呼吸を異常に乱し、汗と唾液にまみれ、涙を垂れ流している。だがそれ以上に俺の心はかき乱されていた。
 
──思い出してしまったから。
以下略



242: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:27:38.65 ID:0whGTSNro
 
 そして治療が行われてから1週間。俺は自分が思い出せるであろう全ての記憶を取り戻した。初めに思い出したまゆりの死の記憶に比べれば、後々の治療は幾分穏やかに進んだものだった。
 しかし、俺が思い出した記憶の中に、鈴羽に関わるある事実。それが俺を苛ました。
 鈴羽はダルの娘であり、IBN5100を俺に託すために2036年から跳躍してきたタイムトラベラー。
 どう足掻いてもIBN5100を手に入れる手立てを見いだせなかった俺たちが取った手段──
以下略



243: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/11(日) 19:29:53.53 ID:0whGTSNro

 俺や鈴羽、紅莉栖は恐らく再構築され、存在はなかったことになる。もちろん、新しく生まれてくる俺たちの子供も。
 あの時──IBN5100を購入するための資金がたまり、満を持して購入に踏み切ってすぐのこと──紅莉栖の様子がおかしくなったのは、恐らくその事実に気づいたからであろう。
 最初のDメールを消してα世界線からβ世界線に跳躍するということは、つまり紅莉栖が刺殺された世界線に戻るということだ。35年後とは言え、自分の存在を消すために生き続けるというのはどういう気持ちだったのだろう。
 そんな罪を背負わせないためにも、紅莉栖は俺たちの記憶を戻すことを拒んだのだ。たとえ変わった先の世界で、存在を消されたとしても。
以下略



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