15:名無しNIPPER[saga]
2015/09/30(水) 04:02:22.40 ID:Csg2FCKN0
もうどうしようもない不安が蔓延して。
それをなんとか振り切ろうと、気分を変えようと店を出た。
人、人、人。
サラリーマン、OL、学生、フリーター…… 次から次へとやってくる人の群れ。
皆何かへ向かっている。
少なくとも今の俺には、彼らには何一つ不安がないように見える。
そんな過剰な妄想が俺の胸を更に深く抉る。
人ごみを避けるように路地へ入った。
しかし相変わらず人が多い…… 大通りのそれよりかはだいぶましであるが。
路地へ逃げ込んだのはいいものの、相変わらず行く当てもなく。
人生の迷子。おまわりさんも助けてくれない。
困ってしまって大変である。
そうして路地から路地をさ迷い歩き、周囲を見渡す。
ここはどこか―― 腹の虫が鳴く。
そういえば何も食べていなかったのだった。
もう歌舞伎町で昼間から自棄酒(やけざけ)を呷ってしまおうか。
そう思い、財布を取り出して中身を確認するが…… 閑古鳥が鳴く。
ええい、もうどこでもいい。
酒は諦めるしかあるまい…… もう一度周囲を見渡す。
ふと目に入る喫茶店―― よし、もうここでいいか。
本来ならばチェーン店などで安く済ませるのが一番いいのだろうが、さ迷う内に歩き疲れてしまい、すぐそこへ行くことも躊躇われた。
腹を満たせばこの不安も幾分か解消されるだろう。
路地裏にひっそりと佇む喫茶店。
おしゃれでありながら、どこか懐かしいようにも見える―― そうして俺はそんな店のドアベルを鳴らしたのだった。
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