20:名無しNIPPER[saga]
2015/09/30(水) 04:22:49.98 ID:Csg2FCKN0
「あの…… あの」
可哀想に。
戸惑う女を尻目に、いつの間にか席に届けられていたBLTサンドに気付いてパクつく。
美味い―― ブラックペッパーがきいたシューシーなベーコンと、ザク切りでシャキシャキとしたレタス、フレッシュなトマト。
モグモグと咀嚼し、喉を鳴らす。
空っぽの腹が満たされていく幸福感。ビールがあったなら更に最高だが…… そればかりは財布の事情でどうしようもない。
「もう…… 行かなくちゃ」
「俺もこれ始めてから凄い稼いでてさぁ」
「そうそう、彼はこの前新車を買ってね――」
「うんうん、僕もタワーマンションに住めたし。実際にみんなこうして成功しているんだから」
俺も金持ちになりてえなあ。
でも実際は…… 本当にこの男どもが金持ちかどうかは疑わしい。
金持ち、成功者と思わせるために借金してでも見映えだけ良くしたピラミッド下層の人間かもしれないし、単純に全部嘘かもしれないし。
「あの…… どいて下さい」
「まあまあ、試しにやってみるのはどう?」
「うん、気に入らなかったら辞めていいからさ」
「まずは入ってみるだけでもどうかな? お金はかからないし」
三人の男たちはいわゆるABCと呼ばれる勧誘テクニックで女を追い詰める。
窓際に座らされた女は、なかなか彼らのゾーンプレスを突破できない。
通路側の席に座られ退路を絶たれているために、彼女は強引に突破することも容易ではないのだ。
ちなみにABCとは、アドバイザーと呼ばれる事情通(彼らが言う凄い人や偉い人、成功者の先輩)をブリッジ、つまり橋渡し役の人間が連れてきてカスタマー(客、被害者、被勧誘者)に紹介するというマルチ商法勧誘の常套手段である。
それで言えばこの光景は一人多いことになってしまうが、それもよくあるパターンだ。
凄い人が更に凄い人とされる者を連れてきてあれこれ説明し、とにかく信憑性を持たせ圧力をかけるのである。
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