22:名無しNIPPER[saga]
2015/09/30(水) 04:29:01.34 ID:Csg2FCKN0
「僕たちは彩音ちゃんに幸せを分けて、彩音ちゃんは仲間に幸せを与えることができるんだ!」
こんなのは全くの嘘。
仲間は減る一方である。
そして幸せを分けるのではなく、不幸を分けている。とんだ貧乏神だ。
実際に、俺を勧誘したAくんであるが―― 俺は後日大学の仲間にその事を相談すると話は瞬く間に広がって、彼は「友人を金蔓にする人間」として総スカンを喰らい、果てには学生課にも話が行き…… それ以来何らかの処分が下されたかどうか定かではないが、彼の顔を見ることはなかった。
これらの教訓から導き出された答えは、全てが上手くいくような話などないということ。
うまい話なんてないのだ。
当たり前だと思うだろう…… しかし、誰だって心のどこかでそんな話が実在することを願っていて、誘惑に負けてしまう者も実際にいるのだ。
心のどこかで―― そう、今の俺のように。
「あの…… もう本当に時間がないので」
よく観察してみると、テーブルには一冊の本。
マルチ商法の勧誘でよく使われていると言われる、不労所得に関する啓発本だ。
こんなことに自分の本が利用されていると知ったら著者はどう思うだろうか…… 風評被害もいいところである。
「通して下さい……」
うまい話などない。
地道に、実直に、コツコツ頑張ることが成功へ近付く唯一の手段だ。
分かってるさ…… 分かってる。
俺もこの男たちと同じだ。未だ心のどこかで自分は才能がある、輝ける未来が確実に用意されている、そんな特別な人間だと信じている。信じたいのだ。
しかし現実から目を逸らし、妄想の世界へ逃げている内では到底望みが叶うはずなどない。
いや、間違った方向だとしても行動している彼らと比べたら俺は…… 行動していない分、下の身分だ。
ああ、また昨夜の感覚が…… 全身をなぞる惨めさが。
どうせ俺なんて。
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