38:名無しNIPPER[saga]
2015/09/30(水) 05:46:05.81 ID:EwL7hHPK0
何だ? 胡散臭い名刺でも寄越すつもりか?
「善次郎くん、君は喫煙者か?」
「――はい?」
「タバコは吸うのかい?」
いや、言葉の意味は分かるけれど―― 一体どういうことだ?
「まあ、ぼちぼち吸いますけど」
「そうか、私だけ吸って悪かったな。君も吸っていいぞ」
「はあ…… それではお言葉に甘えて」
俺もポケットからタバコを取り出す。そして同時にライターも――
「ああ待て。私が火をつけよう」
「は、はあ……」
断る理由もないので従うことにする。
こちらに手を伸ばす玲子。タバコを咥え彼女が点火しやすいように前へ乗り出すが。
「あ、あの―― ライターは?」
しかし、玲子の手にはライターがない。
鳩が豆鉄砲を…… とはこのことであろう。ただ唖然とするばかりである。
散々だ、やはり最初から俺を馬鹿にしていたのだろう。
「本当に俺を馬鹿に――」
「火、ついたぞ」
「――え?」
一体どういうことだ。
「そんなわけ……」
玲子はライターを持っていなかった、それは事実だ。
そして伸ばした片手、その掌はこちらに向いていた。何もなかった、スーツやワイシャツの袖に何かを隠していたわけでもない。
タネも仕掛けもない…… 無から有を生み出してみせたというのか。
「煙が―― 出てる」
玲子の言葉通り火はしっかりとついていたのだ。いつの間にタバコは燃焼している。
これは―― これは一体。
奇想天外、摩訶不思議。彼女は魔法が使えるとでもいうのか。
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